漬物の乳酸菌による乳酸発酵とは?(他の細菌を死滅させる殺菌作用)

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    漬物 乳酸菌

    植物の発酵には、
    酵母菌によるアルコール発酵と、
    乳酸菌による乳酸発酵があります。

    漬物

    ここでは乳酸発酵について見てみましょう。
    漬物には野菜と塩水に基づく味と匂いの他に、 漬物特有の味と匂いがあります。
    キムチを持ち出すまでもなく、 白菜や高菜の古漬けを思い出せばわかることです。

    この漬物特有の味、 とくに酸味、 それと固有の匂い、香り、 これらは乳酸菌による乳酸発酵の結果、 現れるものなのです。

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    乳酸発酵とは

    乳酸菌

    乳酸菌はプドウ糖などの糖類を乳酸に変える菌です。
    乳酸菌はどこにでもいるありふれた菌です。
    人間の皮膚にも付いているし、 空気中にも漂っています。
    果物がぶつかったところから傷むのは、 崩れた組織に乳酸菌が入り込み、 糖分を乳酸に変えるからです。
    乳酸菌でまず注意しておきたいのは、乳酸菌という特定の菌はいないということです。 意外だったかもしれません。
    これは麹菌、酵母菌、あるいは黄色ブドウ球菌などのように、名前がわかれば特定の菌が指定される菌とは違います。
    それでは乳酸菌というのはどのような菌なのでしょうか。
    乳酸菌という名称は、 細菌の生物学的な分類上の特定の菌種を指すものではなく、その性状に対して名づけられたものなのです。
    発酵によって糖類から多量の乳酸を産生し、 かつ、 悪臭の原因になるような腐敗物質をつくらない菌のことを、 一般に乳酸菌と呼ぶのです。

    乳酸菌と呼ばれるための条件は以下のようにされています。
    1)グラム陽性*である
    2)桿菌かんきん(棒状の菌)·球菌である
    3)芽胞をつくらない
    4)運動性が無い
    5)消費ブドウ糖に対して 50%以上の乳酸を生成する
    *グラム陽性とは、 グラム染色と呼ばれる染色方法で青色または紫色に染色される細菌のこと。
    これに対し、 赤色またはピンク色に染色されるものをグラム陰性と呼ぶ。

    以上の条件さえ満たせば、なんだって「乳酸菌」と呼ばれるわけです。
    ですから、乳酸菌には多くの種類の菌が存在することになります。
    もちろん、それだからといっても、乳酸菌をいくつかに大別することはできます。
    まず、その生産物による分類です。 それは、 乳酸のみを最終産物としてつくり出すホモ乳酸菌と、
    ビタミンC、 アルコール、 酢酸など乳酸以外のものを同時に産生するヘテロ乳酸菌2種類です。

    また、細菌の形状から、 球状の乳酸球菌と桿状 (棒状のこと)の乳酸桿菌に分類することもあります。
    つまり、 形が球か棒状かの違いです。
    その他に、生息場所によって分類することもあります。 それは以下のようなものです。
    ●腸管性乳酸菌
    動物の腸管に生息するものです。ヒトの糞便中1gあたりの菌数は、ビフィズス菌が100億個、 ビフィズス菌以外の乳酸菌が 10-100万個であるといわれます。
    ●動物性乳酸菌
    動物質に由来する乳酸菌で、 主に乳を発酵させます。
    ●植物性乳酸菌
    植物質に由来する乳酸菌で、 主に味噌、 醤油、 漬物、 パンなどに利用されます。
    ●海洋乳酸菌
    2009年に提唱された新しい菌です。
    海洋環境から分離した乳酸園で塩っぽい環境を好み、 アルカリ性環境に強いといいます。
    乳酸菌は糖類を発酵することによって多量の乳酸を生産します。
    乳酸はその名前の通り、酸の一種です。
    ですから、乳酸ができれば周囲の環境は酸性になります。
    乳酸菌は酸性条件に強く、このような環境下でも増殖を続けます。
    しかし、他の多くの菌は酸性に弱いのです。 そのため、乳酸菌が増殖する環境では、他の菌は死滅してしまいます。
    つまり、乳酸菌は消毒の役目もするのです。

    善玉菌、悪玉菌

    乳酸菌の働きで腸内環境をよくします。
    乳酸菌は私たちの健康に密接に関連しています。 乳酸菌のうち、前節で見た腸管性乳酸菌と動物性乳酸菌は、私たちの体内、 体外に
    生息しています。
    これらの乳酸菌は私たちの口腔や消化管、 あるいは女性の膣内に常在し、常在細菌叢の一部を成しています。
    乳酸菌が直接、 人の病気の原因になることはなく、 むしろ生体にとって有益になるバリヤーとして機能していると考えられています。 そのため、乳酸菌は「善玉菌」と表現される場合もあります。
    善玉菌と呼ばれるものにはビフィズス菌や、 乳酸桿菌など、 乳酸や酪酸などの有機酸をつくるものが多く知られています。
    一方、悪玉菌はウェルシュ菌やフラギリス菌、 大腸菌など、 悪臭のもととなる、いわゆる腐敗物質を産生するものが多いのが特徴で
    す。

    *腸内には「善玉菌、 日和見菌 (ひよりみきん)、 悪玉菌」 がいるとされ、 赤ん坊の頃は「7:3:0」 くらいのものが、 中年になると 「2:7:1」くらいに変わるとされる。善玉菌の力が衰えると、 日和見菌は悪玉菌に加勢し、 善玉菌が強くて健康だと日和見菌はおとなしくなるといわれる。 なお、 善玉菌· 悪玉菌の名づけ親は、日本の光岡知足 (1930~) である。 光岡は腸内フローラの研究で世界に先駆け、腸内細菌学という新しい学問体系をつくった。
    2007年、メチニコフ賞を受賞。

    また、悪玉菌は二次胆汁酸やニトロソアミンといった発がん性のある物質をつくることが知られています。
    悪玉菌は有機酸の多い環境では生育しにくいものも多いので、乳酸という酸を発生し、腸内環境を酸性にする乳酸菌はその意味でも有益なものといえるでしょう。
    このように、人体に有益な乳酸菌を摂取するという考えは、 パスツール研究所に所属していたロシアの科学者であるイリヤ·メチニコフ (1845~1916) の発案だとされます。
    メチニコフはブルガリアに長寿者が多いことに目をつけ、 ブルガリアの乳酸菌をブルガリア以外の人々に摂取させたところ、長寿者が多くなることを発見し、その功績で1908年にノーベル生理·医学賞を受賞しました。

     

    その後もこうした仮説による研究は発展し、腸内常在細菌叢のバランスを改善することを目的とした製品が次々と開発されました。
    このうち、乳酸菌などの細菌を生きたまま含むもの、 つまりヨーグルトなどのことをプロバイオティクス、それ自体は生菌を含まない
    が、菌が特異的に利用するオリゴ糖などの栄養源を含むもののことをプレバイオティクスと呼び、健康食品として販売、利用されてい
    ます。
    しかし、初期に開発されたほとんどのプロバイオティクス製品は、摂取してもほとんどの乳酸菌が胃で死滅してしまい、腸に到達しな
    いことが明らかになりました。
    そのため、 製剤技術や新しい乳酸菌株の開発研究が行なわれ、 現在では生きたままの菌を腸に到達させることが可能になりました。
    ただ、残念ながら、生きて腸に届いた乳酸菌も、腸内に住み着き増殖することはないことも明らかになっています。
    一方、最近の研究では、 加熱死菌体も疾病予防効果などを有することが報告されています。
    また、人類にとって害をなす乳酸菌も存在します。
    口腔内の乳酸菌は虫歯の原因になることが指摘されていました。
    しかし、 現在では乳酸を産生する能力は高いものの、 歯面への付着能力が低く、 しかもプラーク中の菌数は少ないため、 乳酸菌が虫歯の直接の原因というよりは、発生した虫歯の進行を促進するものであろう、 と考えられています。

    発酵食品(野菜)のいろいろ!乳酸発酵した食べ物は腐敗の心配がない?

    サラダを食べるとき、ドレッシングをかけます。
    したがってサラダが私たちの口に入るときには、 野菜とドレッシングの混合物となっています。
    しかし日本人が日常的に食べる野菜の漬物は、 野菜と塩水の混合物ではありません。
    野菜を塩水に漬けてから、浅漬けでも数十分、白菜や野沢菜の古漬けに至っては数か月、あるいは半年も経ってから食べることになります。
    日本古来の野菜の漬物は、この漬けておく期間に特徴があります。
    野菜を塩水に漬けておくと、天然環境に存在する乳酸菌が野菜や塩水に侵入し、乳酸発酵が始まります。
    乳酸発酵は単純にいえば、1分子のブドウ糖 (CaHi2O&) を分解して、2分子の乳酸(CsH:Os)に変える反応です。
    乳酸菌はこのとき発生する化学反応エネルギーを自分の生命活動に利用し、同時に乳酸菌は環境を酸性にして外敵の微生物の増殖を妨害しているのです。
    乳酸菌はこのときに乳酸だけでなく、副産物としていろいろの有機酸、アルコール類を生産します。
    同時に、清物液に侵入した各種の細菌が、プドウ糖などの糖類を独自の分解法で分解して、これまた各種のアルコール類、 有機酸類を生産します。
    この結果生じた多種類のアルコール類と、 多種類の有機酸類が反応して、多数種類のエステルを生産します。
    エステルは一般に香りのよい化学物質です。
    この結果、 漬物には、乳酸による特有の酸味と共に、 独特のふくよかな香りがつくことになるのです。
    野菜の漬物は、各国、 各民族によっていろいろの物があります。
    日本の塩漬け、糠漬け、 タクアンなどとともに、世界にはキムチ、ザワークラウト、 ピクルスなどがあります。
    乳酸菌はこのように、 発酵漬物に独特の味と香りを与えるだけではありません。
    乳酸菌は乳酸を大量につくることによって漬物を酸性にし、他の菌の増殖を抑えるのです。
    つまり、 事実上、乳酸発酵した食べ物は腐敗する心配がないのです。
    発酵が毒の分解に利用されている例があります。
    アフリカにはキャッサバというイモがあり、 これを主食にします。
    一方、 アマゾン川流域ではキャッサバを擦りおろし、 粉末に加工したものをマンジョカといって主食にします。
    しかし、キャッサバには青酸化合物という猛毒が含まれ、 そのまま食べると命を失います。
    そのため、食べる前に毒抜きの操作が必要になります。幸いなことにこの毒物は水溶性のため、 キャッサバを擦りおろして丁寧に水で晒すことによって、 大半の毒物は無くなります。同時に、この過程で発酵が起こります。
    発酵によってキャッサバの味は酸っぱくなるといいますから、 乳酸発酵の一種なのでしょう。
    そしてこの発酵も毒抜きに一役買っているといいますが、その詳細は明らかではありません。キャッサバ

     

     

     

     

     

     

     

    清物は日本の誇る野菜の発酵食品です。

    変わり種漬物のいろいろ
    *三升漬け(北海道): 青唐辛子、 麹、 醤油をそれぞれ、一升ずつの分量で漬け込んだもの。
    *イブリガッコ(秋田県): 囲炉裏の煙でいぶした大根でつくったタクアン。ガッコは雅香がなまったもの。
    *金婚漬け(岩手県): 縦に細く切った人参とゴボウを昆布で巻いて昆布巻きをつくり、それをワタを抜いたカリモリウリに詰めて味噌漬けにしたもの。
    *三五八漬け(福島県):塩、 麹、 もち米を炊いた物を3:5:8の割合で混ぜ、1週間ほど寝かせてから各種の野菜、 魚などを清け込んだもの。
    *晩菊(山形県):菊の花を中心に各種の野菜を細かく刻んで塩漬けにしたもの。
    *あんにんご(杏に子) 漬け (新潟県):ウワズミサクラの実を塩漬けなどにしたもの。
    *納豆漬け(茨城県):糸引納豆と、大根を縦割りにして干した割千大根を刻んで醤油漬けにしたもの。
    *寒漬け(山口県): 塩漬けした大根を寒風で乾燥し、叩いて薄くしてから醤油などで漬けたもの。
    *緋のかぶ漬け(愛媛県): 緋カブラをダイダイ酢で漬けたもの。赤い色が特徴。
    *壺漬け(鹿児島県):杵でついた干し大根を壷で塩漬けにしてから、調味書油で味付けしたもの。
    *ジージキ漬け(沖縄県) : 二つ割にした大根と黒砂糖を交互に重ねて半年程度漬けたもの。

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