発酵と微生物,乳酸菌の様々な働き

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    乳酸菌の可能性

    新しい食品の保存「パイオプリザベーション」
    乳酸菌とは、乳糖などの糖を利用して増殖し、その過程で大量の乳酸をつくる(乳酸発酵する)菌のことをいいます。
    乳酸菌には、食品の保存性を高める、食品の風味をよくする、人の健康を維持増進させるなどの働きがあります。
    発酵食品以外の乳酸菌の別な働きについて紹介します。
    最近、食品を安全に保存するために乳酸菌を効果的に利用する「バイオプリザベーション」という技術があります。
    バイオ(生物による)プリザベーション(食品の保存)のことをいいます。
    これは1992年にアメリカのレイ博士が提唱したもので、「植物·動物·微生物がつくり出す抗菌作用をもつ物質で、なんらの害作用もなしに食品としてあるいは食品とともに長期人間に食されてきたもの」を「バイオプリザバティプ」といい、この「バイオプリザバティプを使って食品を保存すること」を「バイオプリザベーション」と定義しています。
    そして、乳酸菌がつくり出す抗菌物質を利用した食品の新しい保存方法です。
    これまで紹介してきた乳酸菌の関係した発酵食品もバイオプリザバティプを利用したバイオプリザベーションの仲間ですが、乳酸発酵以外でも(食品を乳酸発酵させなくても)、乳酸菌がつくり出したさまざまな抗菌物質を食品に加えることによって食品を長期に安定した状態で保存させることができれば、これらはすべてバイオプリザベーションと呼べます。
    食品の保存方法としては、加熱(高温·高圧)、冷凍、塩漬け(砂糖漬け)、乾燥、嬬製、食品添加物(保存料)使用など、昔からいろいろな方法がとられていますが、中でも加熱がもっとも一般的な殺菌方法といえます。
    しかし、加熱殺菌には食品の品質を変化させる、ビタミンなどの栄養素を破壊する、色や匂いが変化するなどといった問題があり、さらに、加熱殺菌ができない食品もたくさんあります。
    たとえば、生鮮食品(野菜、果物、刺し身等)などです。
    生野菜から食中毒菌が検出されるという事例があるように、最近、加熱できない食品素材が食中毒菌の感染源となることが問題視されるようになっています。
    また、そのほかの方法にもそれぞれ一長一短があり、安全性と消費者唱好に答えるためにも、素材の味を保ちながら食中毒菌などから食品をまもる方法が必要になってきたのです。
    そこで、注目されてきたのが古くからさまざまな食品の保存に効果があり、安全性が証明されている乳酸菌を利用したバイオプリザベーションです。

    乳酸菌とバイオプリザバティプ

    乳酸菌がつくり出すバイオプリザバティプとして第一にあげられるのが乳酸です。
    乳酸は、酸自体にも殺菌作用がありまが、産生された酸によって食品中のpHが下がり、酸性の環境に弱い有害菌の増殖を抑える働きもあります。
    発酵乳や漬け物などの乳酸発酵食品が、原料の牛乳や野菜より長期に保存できるのは、主として乳酸発酵によってつくられた乳酸の殺菌力によります。
    乳酸以外の有機酸についても保存力や抗菌的効果が調べられていますが、特に乳酸は低いpHから中性の領域まで、多くの
    細菌に対して幅広い発育阻止を示し、またほかの乳酸菌に対しても抗菌作用をもっています。
    しかし、おもしろいことに酵母やカビ類といった真菌類には強い抗菌力を示しません。
    日本酒醸造や醤油の製造で、乳酸菌が酵母やカビと仲良く共存して働いている裏づけでもあります。
    細菌は通常の場合、新しい環境におかれるとすぐには増殖せず、ある程度の時間は静かにしており、しばらくしてから増殖を開始します。
    この時間帯を増殖誘導期といいますが、乳酸は細菌が増殖しやすい付近で中温の温和な条件下でも、増殖誘導期を延長させる力をもっています。
    たとえば、大腸菌の場合は乳酸4.8パーセントの存在下では増殖を開始するまでに通常の三倍の時間を必要とします。
    また、リステリア菌のような低温性食中毒菌園の成育抑制にも役立つので低温流通食品や高温殺菌の困難な食品には高い効果があります。
    さらに、人の胃の常在菌として生息し、消化性潰の発症に深く関係をもつといわれているピロリ菌も耐酸性乳酸菌のつくり出す乳酸によって激減するといわれています。
    乳酸菌の濃度が少なくても、最終的には黄色プドウ球菌は死滅しますが、それまでの間にかなり増殖し、菌は死滅しても毒素(エンテロトキシン)の蓄積される可能性があります。
    したがって、初期に加える乳酸菌はある一定以上の濃度である必要があります。

     

     

     

     

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    バクテリオシン

    乳酸菌がつくり出す物質には有機酸以外に、エタノール、ジアセチル、アセトアルデヒド、バクテリオシン、ロイテリンといったバイオプリザバティプがあります。
    この中で注目されてるのがバクテリオシン(bacteriocin)です。
    バクテリオシンとは、細菌がつくり出す抗菌作用のあるタンパク質またはペプチド類(アミノ酸が数個つながったもの)の総称で、放線菌がつくるストレプトマイシンやテトラサイクリンなどの抗生物質とは違います。
    このバクテリオシンをつくる乳酸菌は、発酵食品や多くの野薬、果実、乳、肉など、身のまわりの食品から得ることができます。
    バクテリオシンの代表としてナイシンがありますが、現在では100種類以上のバクテリオシンが発見されています。
    その多くは耐熱性があり、100℃で30分加熱しても分解しません。
    しかし、普通のタンパク質分解酵素、たとえば腸管の消化酵素によって分解されてしまいます。
    バクテリオシンの抗菌作用のメカニズムはまだ十分に明らかではありませんが、相手の細菌の細胞模に取りついて穴を明けるため、細胞内容物が漏出したり、細胞膜が壊される結果、取りつかれた細菌が死減してしまうと考えられています。
    また冬くのバクテリオシンの抗菌性の範囲は狭く、それを生産する菌と近縁の細菌だけに殺菌力を示すのが多いようです。
    したがって、食品の中で強力なバクテリオシンを生産する、乳酸菌が増殖すると、この菌と同じ種類の乳酸菌は殺されてしまいます。
    しかし、乳酸菌は自己の生産するバクテリオシンに対しては耐性がありますから、 食品の中は生産菌だけになります。
    バクテリオシンの代表で、現在、安全性の高い食品保存料として評価され、ヨーロッパを中心に利用されているのはナイシン
    です。

    ナイシン

    ナイシンはラクチス菌という特定の乳酸菌が生産するバクテリオシンで、発酵乳の中からはじめて発見されました。
    ほかの乳酸菌のバクテリオシンに比べて、抗菌作用の幅が広く、グラム陽性菌の多くに強い活性を示します。
    グラム陰性菌に対しては活性がありませんが、ある種の物質、たとえば、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)やクエン酸塩などが存在すると、グラム陰性菌にも抗菌作用を見せるようになります。
    したがって、グラム陽性菌にも陰性菌にも、強弱の差はあっても抗菌作用を示すので、グラム陽性菌のバチルス属、クロストリジウム属、ストレプトコッカス属、そして陰
    性菌のサルモネラ属や大腸菌群など、広範囲の菌に効果が認められるようになりました。
    細菌の中には芽胞をつくって高温などに強い抵抗を示すものがいますが、ナイシンはこの芽胞の発芽を抑制または阻止する作用もあるといわれています。
    チーズや乳飲料などの腐敗は、芽胞菌であるクロストリジウム属の細菌によることが多いのですが、ナイシンをつくる乳酸菌をスターターとして使用すると、クロストリジウムの生育を抑制できると期待されています。
    ナイシンのほかにアシディラクティシ菌が生産するペディオシン(pediocin)も広い範囲の抗菌性をもっています。
    ペディオコッカス属はチーズなどの伝統食品に広く利用されている乳酸菌ですから、安全性もあり、今後に期待されるバクテリオシンといえるでしょう。
    このように、乳酸菌がつくり出すバクテリオシンは、古くからの発酵食品だけでなく、新しい食品保存物質として低温流通する調理済み食品や殺菌困難な食品などに実用化されていくものと期待されています。

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