青かび Blue Cheeses
大理石の模様のようなカビが入った青カビのチーズ。
ピリッとした刺激と強いにおいがあり、 塩けが強く、 味の濃いチーズです。
単独でいただくのもよいですが、サラダなどに散らして味のアクセントに使うのも、 オススメです。
チーズの個性に負けない、 ボディのしっかりした赤ワインを合わせるようにしましょう。
ロックフォール
フランスを代表する青カビチーズ
イタリアのゴルゴンゾーラ、イギリスのスティルトンと並んで、
世界三大ブルーに称されるフランス代表はロックフォール。
刺激的でシャープ、男性的な味は世界中のチーズ愛好家をとりこにしています。
じっくり味わうと、そのピリッとした強い味の奥に羊乳独特の甘みととろっとしたまろやかさが感じられ、なんともいえず美味です。このブルーチーズの歴史は古く、2000年以上の歴史を持つといわれています。
ロックフォール誕生にはロマンティックな逸話が残っています。
ある日、羊飼いの少年がお昼に羊乳のチーズを食べているところへ恋い焦がれている少女が通りました。
そこで追いかけていって数日後に洞窟に戻ってみると、チーズがカビにおおわれ、よりいっそうおいしくなっていた、というものです。
今でもロックフォールをつくるのに欠かせないのは、洞窟での熟成。
石灰岩でできた洞窟は風通しがよく、内部の空気はいつもフレッシュに保たれています。 カビの胞子を運んできて熟成を助けるここでの湿った空気や、指定の羊から搾られるミルクなどの条件を満たして、初めておいしいロックフォールができるのです。
ロックフォールには各種ブランドがあり、それらを食べくらべるのも楽しいもの。
パピヨンはカビの入り方が美しく、カルルは深みのある味わいです。
ピリッとしたロックフォールには、甘いものがよく合います。
ワインなら白の甘口がよいでしょう。
レーズン入りのパンとも抜群の相性。
肉料理やサラダに使えば、味のアクセントに。
ブルー・ド・ヴェルニュ
普段使いにうれしいリーズナブル価格
名前のとおり、オーヴェルニュ地方のブルーチーズ。
現在ではほとんどが工場製になり、味がまろやかになったといわれますが、独特の粗野な風味は健在。
ねっとりとクリーミーな食感ながら、ピリッと舌を刺激する辛み、軽いノアゼットの風味は、一度食べたら忘れられないおいしさですオーヴェルニュ地方はフランスでも有数のチーズの産地。
カンタルやサレールなど、数々の銘品を生み出しています。
ブルー·ドーヴェルニュは今も安めの価格設定で、民の強い味方です
日々の暮らしで気軽に楽しめるブルーチーズといえるでしょう。
ワインのおいしさを引き立ててくれるこのチーズの特徴は、緑がかった青カビが広がっていること。
褐色を惜びた表皮にも、ところどころにカビが生えているのがわかります。
脂肪分が高めなので、 中身はしっとりとしていながら、ポロッと砕けます
おもしろいのは、これだけの個性を発揮しながらも、チーズそのもののおいしさもさることながら、このチーズの味が料理やワインの味わいを存分に引き立ててくれるということ。
ブルー・ドー・ヴェルニュと味わえば、銘酒の価値をさらに高めてくれるともいわれています。
ボディがしっかりした、 タンニンの強い赤ワインが合います。
ディップやサラダのドレッシング、パスタにも。
おすすめは、スライスしたジャガイモにチーズと生クリームをのせて焼いたもの。
ブルー·ド·ジェクス
スイスに近いジュラ地方の山の味
ブルー·ド·ジェクスは、スイスとの国境に近いフランスのジュラ山脈地方のチーズで、13世紀ごろ、修道士がこの山深い地方にチーズづくりを伝えたといわれています。
1530年ごろにこの地方の支配者であった神聖ローマ皇帝のカール5世がこのチーズをたいそう気に入っていた、という逸話も残っています
現地では、ブルー·ド·ジェクスとコンテをまぜてつくる、ジュラの山の味を教えてくれるフォンデユが楽しまれています
高地のブルーとも呼ばれる大型のブルー·ド·ジェクス、形はまるでお供え餅のよう。
表皮は乾いていて、一見するとブルーチーズには見えません。
味はというと、ミルクの風味が豊かでとてもやさしいティスト。
ヘーゼルナッツのフレイヴァーがかすかに感じられ、少しばかりの苦みも加わり、繊細な味のハーモニーを生み出しています。
ややもろくはありますが、やわらかいテクスチャーです
今でも小さな酪農業でつくられているのが主流なので、あまり生産量が多くありません。
そのため、残念ながら手に入れにくいのが難点。
めぐり合う機会があれば、ぜひ試してみてください。
おいしいものは押すと返ってくるような弾力があり、切り口全体に青カビが散在していますやさしい風味に合わせて、 ワインも軽めのものをセレクトしましょう。ポルトガルのポートワインでも。
また地元ではゆでたジャガイモに塗って食べるのが一般的だとか。
フルム・ダンベール
初心者におすすめのブルー
日本ではロックフォールと人気を二分するブルーチーズ。
ブルーチーズにしてはやさしい味わいなのが、人気の理由かもしれません。
初心者から食べ慣れた通まで幅広い人に愛されているので、ブルーにチャレンジするには、まずこのフルムダンベールから始めるといいでしょう。
このチーズの生まれは、冬が長く気候条件の厳しい山岳地帯、フランス中央部のオーヴェルニュ。
かつては岩のくぼみの中で熟成させていたといいます。
ややゴッゴッして石のような表面をしており、外側が乾いているものがいいとされていますが、近年のものはしっとりとした湿りけがあります。
中身は引き締まった組織で、やや弾力があります。
カビが多いわりに刺激や辛さが少なく、ねっとりとしたマイルドな味わい。
ほのかな甘みさえ感じられます。
フルボディまたはフルーティーで軽い赤ワインがおすすめ。
趣を変えてポルトガルのポートワインもあいます。
パン・ド・カンパーニュやくるみ入りのパンに添えて。
フレッシュな果物や野菜のお相手にも最適です 。
ブレス・ブルー
ゴルゴンソーラをまねてつくられた
このチーズができたいきさつからフランス人の食に対する深い思いを知ることができます。本格的に生産されたのは第二次世界大戦が終わってからですが、実際の誕生は戦時中。
なんでもゴルゴンゾーラが入荷されなくなったのを嘆いたフランスの人たちが、フランスに移住してきたイタリア人に頼んでゴルゴンゾーラに似たチーズをつくろうと躍起になったのがきっかけだとか。
誕生当時はサルゴルロンという名前でもっと大ぶりだったのが、工場製になったときに小さくなったといわれています。
チーズ名はブルー・ド・プレス。ブレス ブルーは商標です
ブレス·ブルーは外側に白ヵビ、内部に青カビという、変わり種。
味のほうはマイルドでクリーミー。
青カビと白カビの風味が適度に調和され、かつふんわりとしているので、とても食べやすいチーズです。
ライト感覚が売りのこのチーズにはやはりライトなワインを。
軽くてフルーティーな赤ワインがぴったりです。
フレッシュな野菜サラダの上に散らしたり、野菜スティックでお酒のお供にしても美味しいです。
ブルー・デ・コース
上品な味わいと風味の強さが美味
ロックフォールの牛乳版といわれるほど、見た目も、石灰岩の自然の洞窟で熟成させる製造方法も似ています。
違いは使用するミルク。
ロックフォールが羊乳を使用するのに対して、ブル・デ·コースは牛乳を使います。
このよく似たブルー·デ·コースとロックフォール、実は産地が重なっています
南フランスのルエルグ地方アヴェロン県では、かつては牛乳関係者と羊乳関係者は同じ組合に入っていたそうです
20世紀に入って、羊と牛が分かれたので、それぞれ羊は羊のチーズを、牛は牛のチーズをつくるに至ったのだとか。
だからブルー·デ·コースはいわばロックフォールの弟分、似ているのも当然なのですね
風味は強いものの、脂肪が多いのでなめらかでとろけるようにクリーミー上品な味わいのチーズです。
タンニンが濃く、コクのある赤ワインがおすすめ。
脂肪分が多くバターに似た風味を持つのでオムレツやサラダのドレッシングなど料理にも幅広く使えます 。
ブルー・キャステロ
シャープさ控えめのふだん使いチーズ
デンマークのブルーチーズといえば、ロックフォールを参考につくられたダナブルーが有名ですが、このブルー·キャステロも近年人気の高いチーズです。
表皮はなく、淡いクリーム色の生地にグリーンがかった青カビが、大理石のようにまじっています。
この青カビが茶色く変色する直前が、ちょうど食べごろ口当たりはやわらかくクリーミーでブルーチーズに見られるピリッとしたシャープさは控えめです。
少々塩けが強いものの、強者ぞろいのブルーチーズの中ではおだやかで食べやすいので、ブルーが苦手なかたも一度試してみてください。
通常は、十角形の半分のものが紙のパッケージに入って売られていますが、一ピースずつ個別に包装されたポーションタイプもあり、少しだけ食べたいときやひとり暮らしでチーズを楽しみたい人に便利です
色々な料理に使えます。サラダに入れたりドレッシングにしたり、ディップやソース、オムレツをはじめとする卵料理などオールマイティにその個性を発揮。
ワインはコクのある赤との相性が良い
ゴルゴンゾーラ
世界中にファンを持つイタリアのブルー
日本で最も愛されているブルーチーズといえば、このゴルゴンゾーラでしょう。
青カビの量が少なく、塩味が控えめ。
やわらかくねっとりとしたクリーミーな食感が受け、ブルーチーズが苦手な人でも好きなってしまいそうです。
ブルーチーズといえばシャープなものばかりと思いがちですが、ゴルゴンゾーラのほのかな甘さとマイルドな味に、こんなブルーチーズもあったのかと、きっと驚くはずです
もともとの産地は、名前の由来ともなったゴルゴンゾーラ村のある北イタリアのロンバルディア州。
村のチーズにすぎなかったゴルゴンゾーラですが1870年ごろから海外にも輸出されるようになり、世界じゅうにファンをつくりました。
現在では需要に合わせて、ミラノ近郊の町で大規模な工場生産がなされるほどです。
甘口と辛口タイプの2種類ある
ところで、ゴルゴンゾーラにはドルチェと呼ばれる甘口タイプと、ナトゥラーレまたはピカンテと呼ばれる辛口タイプがあります。
オリジナルは風味の強いナトゥラーレ(ピカンテ)ですが、一般的に流通しているゴルゴンゾーラはドルチェのほう。
チーズ全体の傾向としては、よりマイルドでやさしいものを求める傾向にありますが、ゴルゴンゾーラの場合は、ここ数年古典的なピカンテの人気が上昇中です
ゴルゴンゾーラは料理との相性も抜群ですが、ぜひ試してほしいのが、熟した洋ナシの上にのせて食べるやり方。
ともに一番おいしい季節は秋なので、すばらしい季節の味を楽しんでくださいそのままでもおいしく、 料理にも幅広く使えるチーズです。
生クリームで少しのばすだけで、 おいしいパスタやリゾット、ステーキのソースのでき上がり。ワインはフルーティーな赤がぴったり。
カブラレス
季節によってミルクの配合が異なる
素朴ながらピリッと刺激的な味わいが、通好みのチーズです。
カビの素は入れないのに、表面から内側へ自然にカビが生えてきます。
生地も青カビもやや茶色がかっていて、半年間熟成させたものが最高だとか
このチーズがおもしろいのは、季節によって味わいが微妙に異なること、これはミルクの配合によるものです
基本的には牛乳を使いますが、山羊や羊のミルクをまぜることもあります
好みは人によって違いますが、やはり3つのミルクを全部まぜたものが一番おいしい。
牛乳のなめらかさ、山羊の酸味、羊のやさしさがみごとに融合して、味に奥行きを与えています。
この3種類の乳をミックスさせたものは、春から夏にかけてつくられます。
かつては、カエデの葉に包んで熟成させていましたが、現在ではアルミホイルに包んで出荷します。
ボディのしっかりした赤ワインはワインとチーズお互いの深い味わいをさらに引き出してくれます。
バゲットやパン・ド・カンパーニュやライ麦パンなどチーズの持ち味を生かしてくれるパンをお供に 。
ケソ・デ・バルデオン
カブラレスを模してつくられた
近年人気上昇中のスペインの青カビチーズ。
このチーズのふるさとはスペイン北部ピコスデ、エウロパ山脈の南部にある深い谷。
ケソ·デ、バルデオンの名前は、この渓谷名に由来します。
このチーズは、スペインの代表的なチーズであるカブラレスを模してつくられました。
しかし、その味わいはずいぶんと違います。
カブラレスが一言でいうとシャープな通好みの味であるのに対し、パルデオンは深みを持ちつつもやさしさが感じられる芳醇な味わい。
しっとりとした食感で口の中でとろけるようです。
甘みとコクがあり、そのあとで若干の塩味と酸味がやってきます。
やさしい食後感も堪能してください
カ工デの葉にくるまれているのも特徴の一つ。
カブラレスは自然にカビが生えてきますが、バルデオンの場合は人為的にカビを植えつけます。
コクのあるどっしりとしたスペイン産のワインと合わせて。
クラッカーに乗せてカナッペにしたり、バゲットに塗ってオープンサンドにしたりしても OK。
蜂蜜をかけても美味しくいただけます 。
スティルトン
リッチな味とマーブル模様が上品
かつてイギリスのエリザベス女王が来日した際に「スティルトンがなければ一日が始まらない!」といって、急きょ空輸便でとり寄せたことがあるとか。
このエピソードでわかるように、スティルトンは生産地イギリスが誇るブルーチーズ。
女王陛下をはじめ、イギリス人にとってなくてはならないチーズといえるでしょう。
ねっとりと濃厚なコクの中にシャープさとほろ苦さがまじった、デリケートで上品な味わい。
塩分は控えめで、あと味にはハチミツのような甘みがあり、リッチな食感が楽しめます。
またルックスのよさも秀逸。
外皮こそは茶色がかったグレーにところどころに白カビがあり、でこばこで、まるで乾いたメロンの皮のようですが、中身は緻密でくすんだアイボリーホワイトに、青カビが大理石模様となって、美しく広がっています。
クリスマスプレゼントに贈りたい
スティルトンという地名は実際にイギリスにありますが、ここが産地ではありません。
デビューを飾ったホテルがこの地にあり、なんとそこから名前がつけられているのです。
実際にスティルトンが誕生し、つくられているのはレスターシャー州、ダービーシャー州、ノッティンガムシャー州の3州で、たった数社でしか製造が許可されていません。
本国イギリスでは、ポットに入ったスティルトンをクリスマスプレゼントとして贈るならわしがあるそうです。
日本でもかわいいデザインのものが売られていますから、チーズ好きな人への贈り物にいかがでしょうか
スティルトンといえばポートワインが欠かせませんが、 他にシェリ一酒やコクのある赤ワインなど、 甘めのお酒とよく合います。
またウイスキーとも相性がよく、こちらはグッと大人の雰囲気。
シュロップシャー・ブルー
クリーミーで、やさしい食感
1970年代にスコットランドでつくられ、1981年に商品として開発されたチーズ。
植物性の着色料、アナトーで色づけしたオレンジ色の地と青カビのコントラストが、視覚的にも鮮やかで印象的です
外観は、ごつごつしていて生地と同じくオレンジ色。
やや湿りけがあり、ところどころに白カビが生えています。
生地はきめがこまかく、明るいオレンジ色に青カビが大理石模様となって広がっています。ねっとりとした味わいを持つ、口当たりのやさしい食べやすいチーズです。
その味わいはスティルトンとチェシャー·ブルーの中間とも表現されることが多く、やや水分が多くクリーミーなのが特徴。
ハチミツのような甘くほんのりとした風味とかすかな苦みがポイントで、それぞれバランスよく溶け合っています。
ほのかな甘みを持つチーズなのでシェリー風味のウイスキーやポートワインとよくマッチします。
スコッチや日本酒との取り合わせもなかなかのもの。
おやつ代わりに蜂蜜をかけても美味しく食べられます 。



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