微生物からの贈り物が発酵です。
発酵とは微生物(乳酸菌、麹菌、酵母菌、納豆菌、酢酸菌など)の働きによって食物が変化し、人間にとって有益に作用すること。
反対に、有害な場合は腐敗となります。
発酵は食物の美味しさや栄養価、保存性を高めるだけでなく、腸内環境の改善や抗酸化作用など、健康効果をもたらします。
日本人は、古代から発酵を生活に取り入れ、その恩恵にあずかってきました。
微生物とは
微生物とは、目に見えないほど微細な生き物を指しています。
微生物のほとんどは1ミリ以下のサイズで、その中には細菌やウイルス、アメーバやゾウリムシなどの原生生物が含まれています。
微生物の中には、1ミリの1000分の1という非常に小さなものもあり、多くは肉眼では判別できず、
実際に目で見るためには顕微鏡が必要になります。食べ物は、微生物によっておいしくもまずくもなります。
それから、食べ物をおいしくする微生物は、腐敗を起こす微生物から食べ物を守り、食べ物を保存する働きもしてくれています。
昔の人たちは、このことを経験的に知っていて、微生物の力を借りて食べ物を保存し、より美味しく食べる方法を見つけていきました。
発酵と3種類の微生物 カビ・酵母・細菌
「カビ」は菌類の一種ですが、菌糸と呼ばれる細長い細胞を持っています。
食品にカビが生えた場合、目で見ることができますが、実はそれはカビの菌糸が絡み合った集合体です
「酵母」は、単細胞で様々な形を持っているもの。
カビのように多くが集まるのではなく、母細胞が大きくなることで成長します。
パンの発酵、ビールやワインなどのお酒造りに使用されます。
「細菌」について
様々な種類があり、中には人間の身体に害をもたらすものもあります。
その反面、食品の発酵に有益な細菌も少なくありません。
役立つのが麹菌、酵母菌、乳酸菌、納豆菌、酢酸菌の5つの細菌です。
麹菌 代表的な存在が麹菌です。日本の「国菌」とも呼ばれています。
麹菌は成分を分解するその際にプロテアーゼやアミラーゼといった酵素を使用しますが、この酵素が甘味や旨みの元となります。
酵母菌 特にお酒造りで使用されます。
*)特徴は、糖をアルコールと炭酸ガスに変えるということ。
酵母菌は糖を主なエサにして生息している微生物で、糖分を分解するとき、アルコールと炭酸ガスを発生させます。
*)紀元前5000年ごろには酵母菌を利用してアルコールを作る技術が生まれていたとも言われています。
最初のお酒は土の上に落ちた果実が発酵することで生まれたとも言われています。
*)作るお酒によって、使用される酵母は異なります。
また、酵母菌は糖を分解するときにアルコールと炭酸ガスを生み出しますが、
この炭酸ガスを逃がさないようにすると発泡性のお酒を造ることができます。
*)味噌や醤油を作るときにも酵母菌は使用されます。
*)酵母菌が欠かせないものといえばパン作り。パンをふっくらと膨らますイーストも、実は酵母菌の一種です。
乳酸菌 健康によい菌といえば真っ先に「乳酸菌」を思い浮かべる人も多いと思います。
動物性乳酸菌と植物性乳酸菌に分けられる
動物性乳酸菌は、主に動物の乳に生息しているますが、
チーズやヨーグルトができるのもこの動物性の乳酸菌の働きによるもの。
植物性の乳酸菌には、酸や塩に対する耐性が強く、他の菌類との共存力も強いなどの特徴があります。
納豆菌 日本の発酵食品を代表するものといえば納豆。
納豆菌は枯草菌の一種で、麦わらや枯草、落ち葉などに存在する菌類です。
納豆菌は大豆の成分を分解、その際にナットウキナーゼやビタミンKといった物質を生み出します。
ナットウキナーゼは腸内環境を整え血行を促進、
ビタミンKは骨を丈夫にするといった健康増進の効果があります。
酢酸菌 酢をつくる菌
食酢の原料となるのはアルコールです。
アルコールは米に麹を加えて作られますが、そのときに生まれるもろみに酢酸菌を加えると、
菌が発酵、アルコールが食酢になります。お酢以外にも、ココナッツミルクを発酵させたナタデココや、
カスピ海ヨーグルトなどに酢酸菌が使われています。
*酢酸菌は自然界に存在する常在菌で、花の蜜などから採取することも可能。
この酢酸菌を米に加えると米酢、リンゴに加えるとリンゴ酢、ワインに加えるとワインビネガーとなります。
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