おいしい発酵食品をつくるカビ,いいカビ悪いカビなど,どのくらい知ってますか?

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    いいカビ悪いカビ 発酵と微生物
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    食品とカビ。おいしい発酵食品をつくるカビ,いいカビ悪いカビなど,どのくらい知ってますか?

    食品に生えるカビ、カビをめぐるトラブル

    昔に比べて、食品の小さな異常も見逃さない消費者が近年増加した気がする。
    食品の安全性に対する不信感の表れだろうか、よく見てから食べる人が増えたようだ。
    2000年夏に関西で、乳製品に黄色プドウ球菌という細菌が増殖して大きな食中毒事件が起きた。
    この年には、カビに関する苦情も例年より非常に多かった。
    一見カビに似ているが、本当はカビでない苦情品も多い。
    食品検査ではカビか否かを正しく判定することが最も大切だが、意外に難しいことがある。
    近年のカビ苦情の特徴の一つに、本当はカビではないものが増えてきたことが挙げられる。
    市販のおにぎりのご飯の表面が海苔で紫色になっていたのを、カビではないかと持ち込まれる例もあった。
    ついうっかりしてケーキを何日か放置しておくと、カビが生えてくる。
    何日くらいで生えてくると皆さんは思うだろうか?

    ケーキ屋さん

    あるホテルが開業数十周年記念に配ったロールケーキに、カビが生えるという事件の起きたことがある。
    ちょうど夏の出来事だった。
    顧客宅を一軒ずつ訪問して配るために、ロールケーキが約1000本用意されました。
    作ったケーキが非常に多くて冷蔵庫に入りきらなかったので、製造後はェアコンの効いた会議室に置いていた。
    1週間で配り終わる予定であった。
    しかし、配り始めてから3、4日経った頃から、ケーキにカビが生えているという苦情が次々と舞い込んだそうだ。
    調べてみたら、配達する前のケーキからもカビの生えたものが次々と見つかった。
    まさに、雨後のタケノコのようだった。
    担当者は惟倖して口もきけなかった。
    パティシエは、細菌と同様に、カビは製造中に手などから感染するものと思っていた。
    室内に浮遊しているカビが食品の汚染源の一つであり、室内に3、4日放置しておけば、ケーキにカビが生えることを知らなかった。しかし、私からすれば生えて当然である。細菌に関する知識のある人は多いが、食品に生えるカビに関してはあまり知られていない。近年、冷凍冷蔵庫などの保存設備が進歩したために、カビに対する備えを忘れてしまったのかもしれない。

    もう一つ、これもあるホテルでの出来事である。
    ウェディングケーキにカビが生えるという事件の起きたことがある。
    新郎の父親は著名人で、ゲンが悪いとカンカンに怒っていた。
    ケーキメーカーの責任者は青ざめていた。
    私のところにあわただしく持ち込まれたケーキを見たとき、一見して、アオカビが生えていると思った。
    そこで、メーカーにいつこのケーキを作ったかを聞くことにした。
    「前日に作って、冷蔵庫に保存していた」との答えだった。
    ちょっと待てよ。アオカビは感染して3日以上経たないと見えるほど大きくならないし、青い胞子も作らない。
    メーカーがケーキの製造日をごまかしているか、これがカビではないかのどちらかしかない。
    ケーキをルーペや顕微鏡でよく見ることにした。
    注意して見てみると、カビの胞子も菌糸もまったく見当たらない。
    青く見えたのは、なんとケーキに付着した青い色素だった。
    あとでわかったことだが、ブルーベリーの色素をそのケーキを作る直前に使ったという。
    ありふれた些細な出来事だったが、ケーキメーカーは小躍りした。一方、拳を振り上げた新郎の父親はなかなか収まらなかった。
    あげくの果ては、父親の顔を立てようと考えたホテルの支配人が「ケーキにカビが生えていたことにしてくれ」と頼みにやってきた。カビは人を翻弄することがある。

    おいしい発酵食品を作るカビ。そもそもカビって何?キノコもカビ?
    カビを知ってますか? キノコと同じくらい知ってますか? おいしいキノコか毒キノコかを、よく知っているアマチュアは多い。 一方、カビに詳しいアマチュアというのはあまり聞いたことがない。 カビを観察したり調べたりするのは、ごく少数の専門家に限られている。 食物の観点からすると、カビとキノコの最大の違いは、おいしく食べられるものがあるか否かだ。 キノコを紹介した本は多いが、カビの本は非常に少ない。

    単純に決めつけることはむずかしい?良いカビ、悪いカビー

    コウジカビ

    新聞やテレビの報道で、誰が言い始めたのかはよくわかりませんが、有害な菌を悪玉菌、利用価値のある、人の味方になる菌を善玉菌と区別する言い方が流行しています。
    「良いカビ、悪いカビ」というわけです。
    また、一般の人の多くは、カビに対して不潔なイメージを持っていて、臭く、病気の原因になるからなるべく殺菌、消毒して消滅させてしまうのが生活の面でも重要だと感じています。
    このような考えは、カビとつき合ううえで誤った方向をもたらします。

     

    第一に、微生物の専門書には、善玉菌、悪玉菌という定義は存在しません。
    実際、単純に善玉、悪玉と決めつけることは不可能です。
    たとえば、アカカビ(フザリウム)は、強毒なアフラトキシンをつくるので悪玉と考えている人も多いようですが、その一方で、菌体内に栄養豊富なタンパク質を合成する種類もあって、家畜のエサの生産に活用できます。
    このカビは増殖のスピードが速く、24時間で20トンもの菌体生産が可能なこともあって、研究改良が進むと食料として利用する可能性もあります。
    一口にアカカビといっても、非常に多様性があって、善玉、悪玉と割り切ることはむずかしいのです。
    また、後でお話しする麦角(ばっかく)中毒を起こすのはクラビセプスというカビがつくる麦角ですが、ここに含まれているエルゴメトリンなどの成分は、中毒の原因になる半面、人工的に生産されて薬用としても活用されています。
    第二に、カビの仲間のうち、人の生活と健康を支えている種類は、全体の99%をも占めます。
    とくに日本人の好みにあった清酒、みそ、しょう油、かつお節は、すべてコウジカビの働きによってできるものです。
    コウジカビは、日本人の健康の基本となるほど大きな貢献をしているのです

    みそー 蒸した豆に、コウジカビを混ぜて発酵させる

    みそは、調味料として役立つだけでなく、日本人にとっては栄養価値の高い重要な食品です。
    みそ汁一杯で30~50グラムも摂取できますから、植物タンバクとして大切なものと言えます。
    今から1600年くらい昔の紀元400年ごろ、朝鮮半島や中国本土との往来によって、日本人はみそや醤油の原型になるものを知っていたのではないでしょうか。
    紀元750年ごろには、中国の唐の鑑真(がんじん)という僧が来朝して、味醤(みしょう)のつくり方を伝授したと伝えられています。
    味醤とは、大豆と穀類を混ぜてカビを増殖させて分解したドロドロした産物で、今日で言えば、みそとしょう油の混合物のようなものです。
    味醤のつくり方が日本列島に少しずつ広まっていき、地方での原料の事情や好み、あるいは製造環境と製法の工夫によって、いろいろと地方色豊かなものができるようになったのです。
    平安期のころは人々の好みが高級化し、調味料になる液状のものを考案し、それがしょう油に進化したのだろうと言われています。
    900年ごろの記録では、はっきりと今日のみそとしょう油になっています。

    みそは、産地別にもきわめて種類が多く、個性的で美味なものがたくさんありますが、材料によって、豆みそ、麦みそ、米みそに大別されます。

    豆みそは、もっともポピュラーなみそで、蒸した豆にコウジカビ(コウジ菌)を混ぜて増殖させ、
    豆がコウジカビだらけになったときに塩と水を加えて補に詰め、一年くらい発酵熟成させて製造します。
    麦みそは、同じように蒸した大豆に麦コウジと塩と水を混ぜて発酵させてつくります。米みそは、蒸した大豆に米コウジ、塩、水を加えて発酵させます。

    米を多く使うみそは、大豆も塩も少なく、そのため、甘口のみそができます。発酵の時間は短く、早くできます。
    反対に米が少ないと、大豆、塩が多くなって辛口のみそができます。発酵の期間は長く、三~八年かかります。
    このみそは味やコクが優れ、保存にも適しています。
    米をまったく使わず、大豆に直接コウジカビを繁殖させると、岡崎八丁みそのような色の赤黒い独特の風味のみそができます。

    カビが、どうしてこんなに豊かな香りと味をつくり出すのか不思議に思えるほどです。

    みそにはカビのいやな臭気もないし、カビが変形したのかとさえ考えられます。
    今日需要の多いのは辛口の白みそです。
    関東や九州では、味が濃く田舎みそとも呼ばれる麦みそが多く使われます。
    豆みそは、八丁みそが代表で名古屋·岡崎が主産地です。
    みその原料の配合は、つくるみその種類によって異なります。
    たとえば、
    白みそは大豆、米コウジ、食塩の混合比が100対200対30です。
    京都や山口が有名産地で、水飴、みりんを加える製品もあります。夏は一週間、冬は一か月熟成させてできあがります。
    なめみそとして有名な
    金山寺みそは、北条時代の僧徒によって700年前に中国から伝来したといわれています。
    大豆20キロリットル、大麦20キロリットルでコウジをつくり、これに900リットルの食塩水を降りかけ、そこに塩漬けしたきゅうり、
    なすを刻んで加え、よく混和して桶に詰め、重石を乗せておきます。
    二週間後にしそ、しょうがを加えて仕込み、6~12カ月間発酵熟成させると食べられるようになります。
    信州の家庭でつくるみそは、大豆を蒸してつぶして10センチくらいのボール状の玉をつくり、糸を通して北側の寒い廊下に吊しておきます。
    そのまま二か月もすると、一面にアオカビが増殖して緑色のボールになります。
    これを桶に集め、塩を加えてフタをして6~10か月熟成させてつくります。
    塩を入れると緑のアオカビが消滅して、うまいみそができるのです。

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    しょう油-コウジカビなくしてつくれない

    みそと同じくらい古くからつくられた日本独特の調味料がしょう油です。
    大豆、小麦を原料とし、塩を加え、コウジカビを使ってタンパク質を加水分解させてつくります。
    濃口しょう油、淡口しょう油、たまりしょう油の三種があります。
    銚子や野田を主産地とする濃口しょう油は、
    大豆あるいは脱脂大豆を煮て、煎って割砕いた小麦を混合してコウジをつくり、塩と水を加えて発酵させてからしばり、火入れ殺菌
    してつくります。よい香りと濃い味を持っていて、全国的に大きな需要があります。
    最新のクロマトグラフで分析すると、香気の筆頭はエチル·アルコールで、そのほか約100種の香気成分が含まれています。
    刺身や握り寿司にしょう油をつけると魚の生臭みが消えます。
    外国の料理にも調和するので世界中で愛用されています。
    京阪神で発達した淡口しょう油は、
    濃口しょう油より濃い食塩水を使って短期間で熟成させるなどの工夫で色を薄く仕上げます。
    色が薄く味が淡白なので関西料理に愛好されています。
    たまりしょう油は、
    小麦は使わず大豆だけを使い、コウジカビと塩で発酵させる中京地区の産物で、味はよいが香りが弱いのが特徴です。

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    かつお節-長期保存が可能なのもカビのおかげ

    日本人の好みに合う調味品で、とくに江戸時代から盛んに製造されてきました。
    優良品とされるのは土佐節、薩摩節で、最近は、伊豆の製品も優良品とされます。
    脂肪の含有比率が1%程度と少なく、魚体がよいかつおが原料として適しています。
    かつおの肉を処理して左右両片に分け、80~95Cで40~50分間煮て、皮と骨を取り去り、数日乾かし、ついで日干しにします。
    その後、外層の肉を削り落とし、さらに五~六日間乾燥してからカビ付けを行ないます。
    樽か箱に詰めて温度と湿度を調節して、カビの自然な発生を促します。
    数週間後にいったんカビを除去して干し、再び箱や樽に詰めてカビ付けをします。
    このような操作を三~四回繰り返し、約二か月かけて製品となります。
    かつおの肉一キログラムから三〇○グラムのかつお節ができます。
    製造上有利なカビは、クサイロカビ(アスペルギルス·グラウクス)、カツオブシカビ(アスペルギルス·グラウクス·ミニマム)、コウジカビ(アスペルギルス·ギムノサルデイ)などで、魚の生臭い臭気を消す効果があります。
    また、カビが十分に繁殖すると、腐敗菌などの発育を止めるので、長期の保存が可能になります。
    製品の水分が三O%以下で香りがよく、タンパク質の分解が進み、イノシン酸、ヒスチージン塩の多いものが優良品です。

    塩辛一酵素の力で独特の香りと旨味が生まれる

    魚介類を細かく切り、塩を降りかけ、貯蔵してできるのが塩辛です。
    魚介に含まれている消化酵素、コウジカビの酵素、空中から混入する微生物の酵素の力で独特の香りと味が生まれます。
    米飯とよく調和し、酒の肴にも適しています。
    イカの塩辛は肝臓を用いて、食塩とコウジを加えてつくります。
    カツオの塩辛は初期にトリプシン系自己消化酵素が働き、後期には細菌の作用が活発になります。
    リジン、アラニンといったアミノ酸の含量が多いので、栄養学的に優れた食品です。
    ウニの塩辛は、食塩を三〇%も(イカの塩辛は10~20%)加えますが、塩が少ないと品質が低下し、良い品ができません。

    清酒- 非常に複雑な発酵工程でつくられる

    米を原料として製造する清酒は日本独特の技術によるもので、歴史の古い食品です。
    昔ながらの技法に基づいて行なわれる清酒製造の技術は非常に複雑で、科学的にはまだよくわかっていないことがたくさんあります
    主原料として米、米コウジ、水を使い、コウジカビ、酵母、乳酸菌といった微生物の働きを利用してつくられます。
    コウジカビで米のデンプンを糖化し、次にサッカロミセス·サケという酵母の作用で糖を発酵させてアルコールを生産させます。
    乳酸菌は酵母の繁殖を助けると同時に、乳酸などの有機酸をつくり出し、雑菌を防止し、酒に香りと味をつけます。
    冬の寒いときに仕込むのが原則ですが、需要が多いので、機械にょって人工的に冬と同じ低温環境をつくり、年間を通していつでも仕込めるようになっています。
    糖化とアルコール発酵を同じもろみの中で同時に進ませる形式は、世界の多くの酒づくりの中でもきわめて珍しいといえます。
    蒸留をしないで(つまり醸造酒)アルコール濃度20%以上の高濃度に達するものは、他に例がありません。

    <清酒のつくり方>
    原料
    「清酒の生命は水」と言われるほど、水質の良否が清酒の質に大きな影響を及ぼします。
    古来、名醸は宮水のように、硬度7~11の硬水を使うことに重要な意義があると考えられていました。
    しかし、原料米の精白程度を低くすれば軟水も十分使えることが明らかになり、ヌカのなかのリン酸成分を応用するなどの技術によって、現在はどの地方の水を使ってもよい酒ができるようになりました。
    清酒製造に適している米は、大粒で蒸し米として軟質のものです。
    岡山、兵庫の米が代表的なものといわれています。米の精白度も清酒の質に大きな影響があります。
    精米歩合は75%を最高に、高いほどよい清酒ができます。
    麹(こうじ)
    酒造米の約四分の一を使って麹をつくります。
    白米をよく洗って一~二昼夜水に漬け、水分が10%の含有率になるように吸水させ、甑(こしき)という容器に入れて約一時間蒸します。
    その後、蒸し米を37℃に冷やし、麹室に入れて床に積んでムシロで覆い、温度と水分を一定(24~27で、湿度80~90) にして高温多湿の状態を保ちます。
    次に、蒸し米の山をくずして広げ、種麹と呼ぶキコウジカビ(アスペルギルス·オーリゼ)を振りかけてから両手で押しもみながら、キコウジカビを蒸し米全体に平均に混ざるようにします。
    10時間経過したら、蒸し米を切り返して温度を平均にします。
    このとき最適な温度は30~32℃です。
    20時間後にはキコウジカビは旺盛に繁殖し、温度も自然に上がります。
    このとき酸素が不足するので、麹ブタという木箱に一·五キログラムずつ盛り分け、棚の上に六枚ずつ重ねておきます。
    3~4時間経つと麹ブタの場所によって温度の差ができるので、麹ブタを上下に積み替えます
    3~4時間で蒸し米の温度が37℃に達したら、手で掻き混ぜて、熱を放出させ酸素を補給します。
    攪拌(かくはん)を繰り返すと、キコウジカビの増殖は最高になり、温度も38~42℃くらいに上昇して麹ができあがります。
    麹は、その後、室から出して冷やします。
    麹の製造は酒造りの中で最も重要な作業で、50時間ぐらいかけて、ていねいにつくります。
    18リットルの米から、約33リットルの麹ができます。
    麹は、デンプンの糖化が強く、タンパク質の分解力の弱いものが良質とされます。

    酒母
    清酒の発酵に必要な大量の酵母を育成したものを酒母、あるいは酛(もと)と呼びます。
    酒母の大量製造には、まず麹と水を混ぜて可溶性の酵素を溶出させたあと10℃以下に冷やして蒸し米を仕込み、10時間後に攪拌します。
    その後も数時間おきに攪拌して温度を7℃に保ちます。
    仕込み後四日目から温度を上げ、10日目に16~20℃にします。
    この間に乳酸が生成されて酸性になり、糖も増加して酵母に適した環境になるので、ここに酵母を加えて増殖させます。
    酵母の増殖によって炭酸ガスが発生して、酒母の表面がふくれ上がります。
    その後、温度を下げて放置します。
    酒母づくりは20~30日かかります。
    多くの場合、効率よく酒母をつくるために、ラクトバチルス·サケという乳酸菌を加えます。
    醪(もろみ)
    このようにつくられた酒母に蒸し米、麹、水を三回に分けて加えます。
    加える時期は一日、第三日、第四日とし、加える量は初めは少なく、次第に多くしていきます
    麹による糖化と、酵母によるアルコール発酵を並行させ、両者を調和して進行させるために考案された方式と考えられます。

    ワイン–酵母の働きによるが、カビも無関係ではない

    清酒と同じ醸造酒で、最も古くから造られた酒と言えばワインです。
    ブドウは、地球上に人類が現われるころには、どこの大陸にも群生していたと言われます。
    人間が発酵現象に気がついて、ワイン造りを始めたのは、今からおよそ一万年ぐらい前というのが定説になっています。
    ワイン発祥の地はオリエント、チグリス·ユーフラテス両河の間の、いわゆるメソボタミア地区だと推定されています。
    ワイン造りはしだいに四辺に広まっていき、紀元前一五○○年ごろになると濾過の技術で透明なワインができるようになりました。
    エジプトやイスラエルでは、つみ取った果実を桶の中に入れて素足で踏みつぶし、布の袋に入れてしぼり出す技術が完成し、ワインの品質が向上しました。
    エジプトでは、紀元前一五〇○年ごろには早くもワイン·グラスを使ってワインを飲んだ形跡があると言われてます。
    ワインをつくるのはカビではなく酵母ですが、カビも無関係ではありません。
    ヨーロッパの古いワイン貯蔵庫(ワインケラー)の内部は、カビがびっしりと繁殖しているそうです。
    このカビが、なんらかの形で、ワインの熟成に関与していると考えられています。
    古いワイン樽や年代物のワインのボトルは、全体がカビに覆われています。
    ワインのコルク栓の部分に黒い綿毛のようなカビが生えていることがあります。
    栓をするときにこぼれたワインなどに生えるカビで、ラコディウム·セレネという名前です。
    毒ではないので、拭き取れば問題ありません。

    ワインは、味と香りが生命です。
    香りの主成分はエチル·アルコールですが、少量のメチル·アルコール、アミル·アルコールが含まれています。
    その他の香りの成分として揮発性の有機酸と脂肪酸など50種以上も検出され、ブドウの種類によって香りの成分の比率や量がかなり異なります。
    ワインを分析して明らかになった成分は薬品として試薬でそろっていますが、それらを混和しても、ワインとはまったく異なったしろものができあがります。
    酵母の作用で初めてすばらしい調和が醸し出されるのです。
    酵母には何か芸術的な感覚のようなものを感じます。

    チーズ-カビだらけのものもあります。

    チーズには、実に多種多様の種類があります。
    日本では、そのことはあまり知られていないようで、チーズはビールのおつまみか子どものオヤツという程度の感覚で見られ、軟らかく、白あるいは薄いクリーム色で味が淡白なものといった見方をする人が大多数です。
    日本での歴史が浅いせいでもあるのでしょう。
    この10年ぐらいの間に、ヨーロッパから本場のチーズが盛んに輸入販売されるようになりましたが、当初はチーズの内部に青いカビが旺盛に繁殖しているのは特別扱いのチーズと思っている人が多く、カビは気持ちが悪いといって敬遠されたようです。
    パリやベルリンの大きなデパートに行くと、食品売場でチーズが占める面積は非常に広いことに驚かされます。
    試しにショーケース内のチーズの種類を数えてみると、600以上も並んでいることを知り、その製品の80%がカビで加工してあるチーズなのに驚きました。
    ヨーロッパでは古くから嗜好性副食物として広く愛好されています。

    チーズには、主として次のような種類があります。
    *超硬質チーズ (粉チーズ用)——–パルメザン
    *硬いチーズ——チーズの内面に孔のあるもの—–エメンタール、グルイエール
          ——チーズの内面に孔のないもの—–エダム、チェダー、ゴーダ、ポロホロン  
    *半硬チーズ——細菌によって熟成———-チルジット、リンプルガー、ブリック
          ——カビによって熟成———-ロックフォール、ゴルゴンゾラ、ブルー、スチルト
    *軟らかいチーズ—-細菌によって熟成——-リンプルガー
           ——カビによって熟成——-カマンベール
           ——発酵しない生チーズ—–カッティジチーズ、クリームチーズ
    *プロセスチーズ—日本に多く、硬いチーズを調合して固めたもの

    途中の操作によって硬いチーズ、軟らかいチーズができます。
    乳酸菌が主力で、これを使うのが原則ですが、実際には自然界のいろいろな細菌やカビがチーズ内に侵入して増殖するので個性豊かな製品ができるのです。
    たとえば、ロックフォール·チーズは表面に白色のアオカビ(ペニシリウム)が増殖し、独特のよい味と香りがつくり出されます。
    表面が白いカビで覆われているカマンベール·チーズはペニシリウウムキャンディダム、ロックフォール·チーズはペニシリウム .ロックフォリティというアオカビが使われます。

    発酵クリーム,発酵バター,ナチュラルチーズは乳の特定成分を発酵させたものです。
    乳を発酵させた製品には、 ヨーグルトのように乳全体を発酵させたものの他に、乳の特定成分だけを分け取って発酵させたものもあります。 そのようなものに、 発酵クリーム、 チーズ、 発酵バターなどがあります。

    納豆-力ビが活躍するのは関西風の塩辛納豆

    栄養面で価値が高いが消化しにくい大豆を、微生物の働きで、きわめて消化のよい形に変えたのが納豆です。
    繊維とカルシウムも豊富で、健康食品でもあります。
    私は関東の人間ですから、単に納豆というと、ネバネバしていて糸を引く製品を思い浮かべますが、
    関西では豆粒の形で黒くてパラパラに乾燥した大豆食品を指すようです。
    関東風を糸引き納豆、関西風を塩辛納豆、もしくは塩納豆と呼んで区別しています。
    糸引き納豆の製造には、カビではなく納豆菌(バチルス·ナットウ)を使います。
    その納豆菌は、食品を腐敗させる菌の代表格であるバチルス·サブティリスという土壌菌を活用してつくります。
    腐敗菌を食品の加工に使うのは珍しい例といえます。
    枯草菌や馬鈴薯菌と近い性質を持っています。
    好気性(生育に酸素を必要とする性質)のグラム陽性菌(特殊な溶液に染まる種類の菌)で40~50℃でよく発育し、強いデンプン糖化力を持っています。
    納豆菌は藁にたくさん付着しているので、昔は、大豆を蒸して藁に包んで暖かいところで発酵させてつくりました。
    今日では、豆を軟らかく煮て、培養した優良菌を使って製造します。
    大豆10キログラムから、二倍の20キログラムの納豆ができます。
    納豆には特有の芳香があって、一緒に食べたものがよく消化される利点があります。
    赤痢菌、チフス菌、シラクモカビなどを殺菌する力もあるので衛生的な食べ物で、健康食として人気が高まっています。

    塩辛納豆は、大豆を蒸してムシロに広げて種子コウジ(ショウユコウジカビ)を加え、小麦粉を大豆の半量混ぜて保温して培養します。二~三日後にサンショウ、ショウガの粉をかけ、食塩水に漬けて桶に入れます。
    六か月間発酵させ、二~三日乾かして製品とします。
    そのままでも食べますが、酒と酢を混ぜた液に一夜漬けて軟らかくし、大根おろしとわさびをつけると美味で、酒の肴に合います
    塩辛納豆には、塩納豆、浜納豆、天竜寺納豆などといった製品があります。

    おいしい発酵食材 納豆 村田商店の古今納豆
    「365日、休みなしです。従業員は多くなり、機械化している部分はもちあんありますが、それでもやはり企業ではなく家業なんです」

    漬物-ニシン漬けもコウジカビの働きです。

    日本の伝統食、漬物は繊維が豊富で、乳酸菌、バチルス、酵母、酢酸菌などの微生物の活動が盛んな健康的な食品といえます。
    最もボピュラーなヌカみそ漬けはヌカの中の酵母、馬鈴薯菌、乳酸菌の働きを利用するものですが、コウジカビを使う漬物も全国各地でつくられています。
    北海道の冬の伝統的な漬物にニシン漬けがあります。
    身欠きニシンを大根やキャベッと混ぜて、米麹(蒸し米にコウジカビを繁殖させたもの)と食塩をふりかけて重しをかけて漬けます。
    20日くらいで熟成します。
    同じ北海道の鮭のはさみ漬け、秋田のはたはた寿司、石川のかぶら寿司などもコウジカどを利用した漬物です。
    なお、漬物を作るときに塩の量が少ないと、アオカビ(ベニシリウム)やアカカビ(フザリウム)などのカビが生えて、
    味や色が変わります。

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