


自らの文化を相手に押しつけないという気質
「ビールの国といえば?」という問いに「ドイツ」と答える日本人は多いでしょう。
たしかにそれも正解です。
しかし、ベルギーも忘れてはなりません。
ベルギーは九州より小さい国土に1000近い銘柄のビールがあります。
しかし日本では、ベルギーがビール大国であることがまだあまり一般的ではないようです。
ベルギーのビールを知るには、まずベルギーという国自体のことを知る必要があります。
それは、この国の複雑さこそが多彩なビールを生んだ一因でもあるからです。
現在、ベルギーには2つの大きな言語体系があります。南北にほぼ真ふたつに分かれ、
南のワロン地方がフランス語 (ワロン語)、北のフランダース地方がオランダ語 (フラマン語)、首都ブリュッセルではほとんどの
人が両方の言葉を話すが、地方に行くと自分の地域の言葉しか話せない人も多いのです。
言語が違うということは、そのルーツも違うということです。
南では髪の黒いラテン系、北では大柄なゲルマン系の人々をよく見かけます。
違いはビールにも表れていて南は「セゾン」など軽やかでスパイシーなビール、北は「ゴールデン、ストロングエール」のように力強いものが多い。
以前ブリュッセルを訪れたとき、ベルギー人同士が英語で話し合っている場画に遭遇しました。
「なぜオランダ語かフランス語を使わないのか」と尋ねると、「僕たちはどちらの言葉も話せるが、僕はオランダ語で彼はフランス語がネイティブだから、英語でしゃべるのがフェアなんだ」と答えました。
お互いがお互いの文化をリスペクトし、自らの文化を相手に押しつけないという気質がうかがえます。
ビールに関しても同じことが言えるでしょう。
醸造所ごとに「自由にやりたいからこそ、ほかに干渉しない」といった独自性があります。さらに、 消費者も自分自身の好みをはっきり認識しているため、さまざまなビールが支持される土壌が出来上がっているのです。
スパイスの香りが鮮烈なビールやレモン果汁のように酸っぱいビールなど、多くの日本人のビール観とはほど遠いビールも、それぞれのファンを着実に獲得しています。
ベルジャン·ストロングエール
「ベルジャン·ストロングエール」は文字通りアルコール度数の高いビールです。
アルコール度数は7~12%。
一見ライトラガーのような明るい黄金色でフルーティーかつ甘味のあるペール系のものと、モルトのこうばしい香りやブラウンシュガーのような甘味があるダーク系に大別できます。
デュベル
「悪魔」を意味する「デュベル」。1871年創業のデュベル·モルトガット醸造所は、第一次世界大戦後に人気が高まったイギリス風ストロングェールを造ろうと考えました。
1923年、醸造学者ジャン·ド、クレルク教授の協力を得て、「マッキュワンズ」の酵母を利用したエールが完成しました。
試飲したひとりが飲みやすい味とハイアルコールに「これは悪魔だ」とつぶやき、名前が決まった、ということです。
デュベル」は18~28℃でで1次発酵、温度を下げながら2次発酵させたあと氷点下の熟成に入れる。
その後いったんろ過したうえで酵母と糖を加え、ボトルに詰めて24℃で3次発酵、最後に4~5℃で寝かせるという複雑で細かな醸造
工程を経て誕生します。
醸造所の外壁には、「シーッ、お静かに。デュベル熟成中」と書かれているほど繊細なのです。
明るいゴールドにホイップクリームのような豊かな泡が立つ。リンゴやメロンの香りとハチミツ、綿菓子、クロープなどのフレーバーがあり、ホップの苦味とアルコールの温かさが素晴らしい。
スカルディス アンバー
「スカルディス アンバー」は、1769年に設立されたデュブイソン醸造所のビールです。
深いアンズ色で、熟した果実や果肉の厚い干し柿、ドライアプリコット、ナッツなどの香りがする。 口の中では上白糖やカラメルの甘味をしっかりと感じ、ほどよいホップの苦味が追いかけてきます。
さらに、存在感のあるアルコールの温かさを感じ、そのバランスが絶妙。チョコレートコーティングされた砂糖漬けのオレンジと相性がよく、意外なところでは酢豚やつくだ煮とも合うコニャックのように食後酒や寝酒としても楽しむのもお勧めです。
もともと「スカルディス」は「ブッシュ」という名前で流通していました。
「デュプイソン」は「薮」という意味だが、第一次大戦末期に醸造所がイギリス軍によってドイツから解放された記念に英語のブランド名を採用。ところが2004年、アメリカに同名のビール会社があるため輸出製品の名称を変更しました。ちなみに「ス
カルディス」はベルギー最大のスヘルデ川のラテン語表記に由来します。

パウエル、クワック
「パウエル、クワック」はユニークな専用グラスで有名です。19世紀初頭、醸造所と宿屋を経営していたパウエル、クワック氏は、毎日訪れる郵便配達人が馬車の御者台から降りることなくビールを楽しめるように、ネックのくびれたグラスと馬車に付けるラックを考案しました。
現在は、当時のデザインに土台が付いたラックでサーブされている。
ラックごと
持ち上げて飲んでもいいが、200年前のベルギーに思いを馳せながら、グラスを外して飲むのもの酒落ています。
もちろん、「パウエル・クワック」の魅力はグラスだけではない。
クリアで明るい銅色に、うっすらと色の付いた泡が立つ様は実に美しい。
熟れきったフルーツが放つようなアルコールの香りが漂い口に含むとキャラメルやブラウンシュガーを思わせるモルトの甘いフレーバ
ーがフワッと広がっていく。かすかだがクロープなどのスパイスフレーバー、ウッドチップのキャラクターも探し出せる。 のどを通すとアルコールの優しい温かさを感じられ、心がやすらぎます。
デリリウム ノクトルム
ヒューグ醸造所の「デリリウム トレメンス」が発売されたのは1989年12月26日。
その10周年を記念して1999年に造られたのが、この「デリリウム ノクトルム」だ。
ちなみに「デリリウム トレメンス」は「アルコール中毒患者の震え」という意味で、その名前のためにアメリカで輸人禁止になっていた時期もある。
またピンクの象は酔っぱらうと見える幻覚だ。「ノクトレム」は「夜」という意味のラテン語なので、さしずめナイトパージョンというところでしょうか。
「デリリウムノクトレム」は、かすかにライムグリーンの色調を持つダークなマホガニーブラウン。ほとんど光を通すことなく、まさに夜のイメージです。 ナッツやチョコレートムース、松脂に似たアロマが、漂い、口に合むとレーズンやバニラクリーム、カラメルのような味わいがあるものの、香りの印象ほど甘味は感じない。
苦味や酸味、シナモンやクロープなどの風味もわずかに隠れている。
空な開夜に、あまたの味わいが潜んいるようです。
グーデン・カロルス キュベ・ヴァン・ド・ケイゼル
べルギーのメッヘレンの町に「グーデン・カロルス」を造るヘット・アンケル酸造所があります。
1369年の書類に醸造ギルド宛の入金記録が残っており、創業はさらに時を遡るでしょう。
600年以上続く、歴史ある醸造所です。
「グーデン·カロルス」とは「黄金のカロルス」のこと。
メッヘレンで育ち、へット·アンケルのパブに入り浸っていたカロルス5世(カール5世)をモチーフにして16世紀に発行された金貨にちなみ、命名された。
中でも「ケイゼル」(皇帝)を冠した「キュベ,ヴァン·ド·ケイゼル」は特にゆかり深い銘柄で、毎年、カロルス5世の誕生日にあたる2月24日に仕込む限定酸造のビールです。最高のビールと評する人は多数います。
ダークなマロンブラウンにリッチな泡が立つ。ローストモルトと酵母が醸し出すチョコレートやレーズン、イチジク、クローブのアロマと、カラメルやチョコレートトリュフ、黒糖、ハチミツのフレーバー、特別酸造ならではの暫沢な重厚感を織りなす。
ドライフルーツやチョコレートエクレアと楽しみたい。
デウス
「デウス」の醸造工程は非常に複雑です。
ベルギーのボステールス醸造所で1次2次発酵を行ったあと、瓶内で3次発酵。さらに、瓶口が下になるように毎日少しずつ傾け、澱を瓶口に集めて栓ごと凍らせ抜き取るーシャンパンと同じこの澱抜き工程はフランスで行われます。
そのため、「デウス」はフランスとベルギーの間を往復する。
手間暇かけて育てられた「デウス」は、実にゴージャス。ブリリアントなライトゴールドと純白の泡が、鮮やかなコントラストを描く。
アロマから感じるのはハチミツ、熟れた果実、スミレ、氷砂糖ミント、カステラ、ワッフル ーなど。
焼きたてパンを思わすモルトの香りがほのかに漂い、「デウス」が発泡ワインではなく、あくまでビールであることを主張している。ひと口飲むとアルコールと高いカーボネーションを感じ、口の中で気泡が弾ける感触が心地よい。
食前酒としてもお勧めだが、イチゴやオレンジ、マンゴーなどフルーツのデザートと合わせるのもいい。

マルール ダーク・ブリュット
マルール醸造所の創業者エマニュエル·ランツヘール氏の父は、ホップの流通業者だった。そして、その先祖は17世紀から第二次世界大戦まで5代にわたってビール醸造所を経営していた家系
1991年、エマニュエル氏は父の死を機にランツヘール家による醸造再開を決意し、1997年にその夢を叶えた。
「マルールダークプリュット」は内側を焦がしたアメリカンオーク樽で熱成されており、モルトの甘味とこうばしさ、 かすかな苦味が心地いい。
巨峰やドライブラム、黒糖にも似たフレーバーも感じる。懐造工程はシャンパンと似ている。ボトルの口を凍らせて設を抜く作業はフランスのシャンパーニュまでボトルを送って行うこだわりようです。
ベルギーチョコレート、キャラメル、黒糖ででコーティングされたクルミ、小倉あんのもなかなど甘い菓子、香りの高いシガーと一緒に楽しみたい
「マルールはフランス語で「不幸」の意。逆民的本ーミングは、ウイットに富んだべルギー人の得意技です。
ユニブルー モウディット
カナダ、ケベック州にあるスリーマンユニブルー社のビールはすべてベルギースタイル。
同州の公用語はフランス語なので、同じフランス語圏の南べルギーにシンパシーを感じることは不思議でない。
1992年の創業時にはベルギーの醸造所からアドバイスも受けている。
ネーミングやラベルもヨーロッパの寓話や絵画を彷彿させる。
「モウディット」は地獄におちた人々」という意味で、ラベルは1890年代に書かれた物語「地獄に譲ちた人達の航海」のワンシーンだ
「モウディット」のグラスからは、焼き栗やモンブランケーキ、練乳を連想させるアロマとコリアンダーの香りが広がる、ひと口飲むとキャラメルのような甘味とオレンジを思わせるわずかな酸味、それを追うようにホッップとローストの苦味が現れる。
そして、コリアンダーの刺激的なフレーパーへと続いて終わる。
爽やかなパレードが通り過ぎていくようだ
カナダのロックスター、ロベール·シヤルルポア氏が元オーナーのひとりでもあったこ話題のひとつだろう。
ブラザー・セロニアス
ノース,コースト,ブルーイング社がカリフォルニア州北西部フォートプラッグで創業を開始したのは1988年。それからわずか20年の間に、コンテストの受賞歴が70を超えるほど急成長を遂げた。
モルトとホップのバランスがいいアンバーエールの「レッドシール」、ホップの効いた「アクメIPA」、芳醇なインペリアルスタウトの「オールド・ラスプーチン」など、たしかな技術に支えられた銘柄が数多くある。
そして、「ブラザー・セロニアス」もそのひとつ。独特の不協和音と強烈なオリジナリティーが魅力の奇才ジャズ·ピアニスト、セロニアス・モンクにちなんで名付けられた。
素晴らしいモルトの甘味に加えてコーヒーやチョコレート、イチジク、レーズン、バニラといった香りが次から次へと折り重なる。強い個性のぶつかり合いや不協和音こそ最大の調和と考えていたセロニアスの名にふさわしいビールです。
売り上げの一部がミュージシャン育成のため、音楽学校に寄付されている。

常陸野ネストビール エキストラハイ
「常陸野ネストビール」のコンテスト受賞歴は数知れない。
「エキストラハイ(XH)」も1998年のワールド·ビアカップを皮切りに、国内外でメダルを獲得し続けている。
「常陸野ネストビール」は江戸時代から続く造り酒屋 ·木内酒造が1996年に醸造を始めたクラフトビールです。
「ネスト」の名は醸造所のある常陸鴻巣と、実際にフクロウの「巣」が近くにあったことに由来している。
現在はアメリカやヨーロッパに年間100㎘以上を輸出するほどの国際的醸造所。海外では「フクロウマークのネストビール」として親しまれている。
「エキストラハイ」を口に含むとアルコールの温もり、ローストモルトとブラウンシュガーを思わせるこうばしい甘味、鮮烈なコリアンダーの刺激、バニラ、シナモン、セロリ、オレンジなどを連想する香りと味わい、ウッディーでスモーキーなキャラクターが幾重に
も折り重なって押し寄せる。フレーバーの宝箱のようなビールです。
ベルジャン・ホワイトエール
ベルギーの小麦ビールが「ベルジャン·ホワイトエール」です。
小麦を麦芽化せずに使い、白濁しているので「ホワイト」と呼ばれます。
麦汁を煮沸する際に入れるコリアンダーやオレンジビールといったスパイスの香りがしっかりと効いている点が同じ小麦ビールでも、南ドイツのヴァイツェンと大きく違う点で。苦味は少ない。
ヒューガルデン・ホワイト
「ヒューガルデン・ホワイト」は、ベルギーの首都プリュッセルから車で30分ほど走ったヒューガルデン村に、古くから伝わるホワイトエールだ。
麦芽化されていない小麦と大麦麦芽をほぼ同量、さらにコリアンダーやオレンジピールといったスパイスを使って造られる。
20世紀半ば、この伝統的なホワイトビールの醸造は一時期絶滅の危機に瀕していた。しかし、同村で牛乳屋を営んでいたピエール·セリス氏が「ヒューガルデン・ホワイト」として復興させ、現在では世界的に広く愛されている。
1985年、醸造はセリス氏から世界最大のビール会社インベプ社へ変わったものの、
ベルギーを代表するホワイトエールであることに変わりはない。
くすみのあるライトイエロー。コリアンダーやオレンジの香り、酵母の造り出すバナナやハニー、バニラを思わせる香りも心地よい。麹のようなアロマもある。ベルギーのポテトフライ「フリッツ」やワッフル、バナナプディングなどスイーツとも相性抜群です。
セリス・ホワイト
ベルギーで「ヒューガルデン・ホワイト」を復興させたピエール・セリス氏がアメリカに渡り、新たに生み出したのが「セリスホワイト」だ。
小麦の豊かなタンパク質と酵母によるくすみ。優しいライトイエローのビールの上にホイップクリームのようなやわらかい泡が盛り上がる。口に含むと、オレンジピールが放つ柑橘系の爽やかな香りと酸味、皮の裏側の白い部分が持つような若干の苦みが広がる。麹にも似た香り、バナナやハニーに似たアロマとフレーバー、鮮烈なコリアンダーの風味を感じ、
「ヒューガルデンよりもヒューガルデンらしい」と語るファンもいる。
なお、1995年にアメリカのリス醸造所がミラー社に買収されたため、その後「セリス・ホワイト」はベルギーのデ·スメット醸造所(現アフリゲム醸造所)、現在はヴァン·スティーンベルグ醸造所に生産を移している。
またセリス氏自身は、新たに「セントベルナルディス·ホワイト」や洞窟で熱成させる「グロッテンビア」を手がけました。
こぶし花ビール ベルギーホワイト
「キャッセ羽生」は、埼玉県羽生市と地元農業協同組合、商工会が出資した農業協同組合。
レストランや地元野菜の物産館、そして「こぶし花ビール」を醸造する羽生ブルワリーがある。
誤解を恐れずに言うと、このような行政主導型の醸造所で優れたビールを造るところは数少ない。しかし例外もあ
り、「こぶし花ビール」はその最たる存在なのです。「こぶし花ビール ベルギーホワイト」は、ベルジャン·ホワイトの特徴
であるコリアンダーのスパイシーなアロマ、オレンジピールの甘い風味とほのかな苦味がとてもいい。
実は、この微妙なバランスの取り方こそが、ビール職人の腕の見せどころ。コリアンダーの香りを効かせすぎると違和感につながり、オレンジピールが多すぎると苦味が前に出てしまう。 かといってそれらを隠してしまうとベルジャン·ホワイトである意味がない。
「こぶし花ビール ベルギーホワイト」はそのころあいを日本人の嗜好に合わせ、絶妙なバランスで造りあげている。
ベルジャン· ぺールエール
「ベルジャン·ペールエール」は淡いゴールドから銅色のビールで、アルコール度数はベルギーのビールとしては低めの5~7.5%
モルトとホップのバランスがよいです。
デ・コーニンク
アントワープで愛される「デ、コーニンク」は、ラベルと王冠に手の絵が描かれている地元生まれのビールだ。
アントワープという地名は、オランダ語の「手(hand)を投げる(Werpen)」という意味。
人々を苦しめる巨人の手を切り落して川に投げ捨てた英雄ブラポーの伝説にもなんでいる。
濃いアンパー色の「デ・コーニンク」はあんずやグレープ、クロープのような香りが楽しめます。
口に含むと、 まずモルトの優しい甘味、続いてホップの苦みがゆくりと現れて、バランスよく行き交う。
甘すぎず苦すぎず、絶妙だ、 甘さをえたアイスティィーのようでもある。
グラスは「ポルケ」と呼ばれる聖杯型が一般的だが、ゴプレット型の「フルッチェ」や丸みを帯びた脚つきの「プリンスク」もある。アントワープのカフェでは「ポルケとプリンスタを一杯ずつ」のようにグラスの形でオーダーする客も多い
アントワースっ子にとって、ビールは「デ・コーニンク」があたりまえ。

ポペリンフス・ホメル・ビア
「ポペリンフスホメル・ビア」にベルギーではホップの強いビールに属する。それもそのはず、「ホメル」とはフラマン語で「ホップ」を意味する言葉。
醸造所の近くにはポペリンへというホップの名産地があり、世界的規模のホップ祭りが催されるほどだ。
ホップに対するこだわりと愛着は人一倍強い。
「ポペリンフス・ホメル」を和訳すると「ポペリンへのホップ」なのだ
「ポペリンフスホメル・ビア」はわずかに霞のあるオレンジがかったライトゴールドに純白の泡がきめ細かく保たれている。
ホップや柑橘系の甘酸っばい香り、クロープやペッパーに似たスパイシーアロマ、わずかにウッディーなキャラクターも漂う。
モルトの甘味と「ポペリンへのホップ」という名に負けぬしっかりとした苦味が爽快だ。地元産のブルワーズ、ゴールドとハラタウ種
という2種類のホップの成せる業だ。
苦味の引き際は素早く、後口には苦味とともに甘味も感じる。サラダやチキン、シーフードと相性がいい
アビー(トラビスト)
修道院で造られているビールは、伝統のレシビに基づいた歴史あるビールです。
色や香り、味わいは各修道院ごとに違いがあり、その特徴はひと言でまとめることができないほど個性的。
その中でも、トラピスト会系修道院の醸造所で造られているビールのみ
に「トラピストビール」という呼称の使用が認められいます。
トラピストビールはベルギーに6カ所、オランダに1カ所しかありません。
なお、もともと修道院で造られていたビールのレシピを用い、民間の醸造所が醸造しているビールを称して「アビー」といいます。
シメイ ブルー
「シメイ」を造るスクールモン修道院は、1850年に建立された。
1862年にはビールの醸造を始めており、第一次世界大戦後には「トラピスト・ビール」という呼称を初めて使っている。
日本でもトラピスト・ビールとして初めに紹介され、現在も非常に人気が高い。
主な銘柄は、古典的レシピの「レッド」1966年に新発売されたドライな「ホワイト」、それにこの「ブルー」だ
赤紫がかった濃い栗色の「シメイ ブルー」をグラスに注ぐと、リッチで細かい泡がムースのように盛り上がる。ブラックチェリーやウッドチップ、クロープ、モルトの甘い香りが舞い立つ。ひと口味わうと、レーズンに似たフルーティーフレーバーとシナモンやリコリス、ミント、黒胡根などスパイスのキャラクターが次々に現れ、後口に苦味が残る。万華鏡のような、めまぐるしく多彩な変化に心が躍る。
ラベルに年代が入ったビンテージビールなので、熟成期間の違うビールを飲み比べるのも楽しい。
オルヴァル
金の谷という意味の「オルヴァル」。
そのラベルやグラスには、指輪をくわえた鱒の絵が描かれている。
これは、1076年にイタリアのトスカーナからやって来たマチルダ伯爵夫人と鱒の故事に由来する。
夫人が泉に落としてしまった大切な金の指輪を鱒がくわえて拾い上げ、そのお礼として夫人は修道院を建てたという。
11世紀の修道院は残っていないが、1930年に建てられた現在の建物は壮大。
醸造室の壁に十字架が掛けられており、信仰の深さを感じる。
「オルヴァル」は、オレンジがかったディープゴールド。綿菓子のように豊かな泡が立つ。オレンジや百合の花、松脂、乾いた薪に似たアロマが心地よい。「オルヴァル」の特徴でもあるドライホッピングによるスティアリン·ゴールディングス·ホップの香りは、マッシュルームとたとえられることもある。口に含むとオレンジの皮のような酸味と苦味が広がる。
オルヴァル修道院ではチーズとパンも作っており、その相性のよさは言わずもがなである。
ロシュフォール 10
「ロシュフォール1 0」は、アロマとフレーバーの宝庫だ。
アロマでは、レーズン、イチジク、巨峰、アメリカンチェリー、プラムといったフルーティーな香りと、モルトがもたらすクルミやチョコレートなどを感じる。
口に含むとアロマのイメージに、クローブ、カカオ、黒胡椒、シナモン、リコリス、バニラといったスパイシーな刺激が加わる。
チョコレートの甘味も感じるものの、決して支配的ではなくほどよいバランスがたまらない。
飲み込むとアルコールの温かさがのどから食道、そして胃袋へと伝わっていくのがわかる。
「ロシュフォール」にはアルコール度数の低いものから順番に「6」「8」「10」の3銘柄がある。醸造しているサン·レミ修道院は厳格なトラピスト会修道院の中でも特に厳格で有名。
1595年から続けるビール造りも修道院の活動資金を得るためであり、利益を上げるためではない。
世界的に人気の高い「ロシュフォール」とはいえ、必要以上の量を造る気はないのです。
ウェストマール・トリプル
「ウェストマール·トリプル」を造る聖心ノートルダム修道院の設立は、1794年だ。1836年には自家消費のビール醸造を開始しており、1870年代には地元に限って販売、1920年以降はほかの地域への流通も始めている。
白い王冠の色から「ホワイトキャップ」の愛称で呼ばれている「ウエストマール・トリプル」が売られるようになったのは1945年。
第二次世界大戦後生まれのニューフェースだ。
当時、ベルギーで薄い色のビールの人気が高まっていたことを受けて、新たに開発された。
その後、多くの醸造所がこの成功を参考に、淡色かつフルーティーでハイアルコールのビールを造ったため、「ウエスト
マール·トリプル」は「トリプルの母」とも呼ばれている。
ディーブゴールドに純白の泡が美しい。上白糖のような甘味、オレンジやラ,フランスを思わせるフルーティーなフレーバー、クローブやザーツホップのスパイシーな魅力が次々と顔を出したあと、苦味がゆっくりと表れる。
アヘル・ブラウン
淡いゴールドカラーの「アヘル·ブロンド」と、この「アへル・ブラウン」を造るアヘル醸造所(ベネディクトゥス修道院)は、1686年に建てられたが、フランス革命で破壊されてしまう。
1844年に再建され、1852年にはビール造りを始めたものの、第一次世界大戦の影響で醸造を中止せざるを得なかったという、数奇な運命をたどってきた。
そして現代。1998年にウェストマール醸造所で長年技術主任を務めたトーマス神父を招いて、世界で7番目のトラピストビール醸造所として再開した。
現在はロシュフォール醸造所から招いたアントワーヌ神父が指導しており、院内にパブをもつ珍しい修道院でもある。
「アヘル·ブラウン」は、濃いマロンブラウン。炭酸の勢いがしっかりあり魅力的な泡が立つ。イチジクやプラムなどフルーティーな香りが漂い、口に含むとレーズンやブラウンシュガー、ローストモルトのこうばしさと甘味がわき立つ。
後口には、ホップの苦味とモルトの甘味がバランスよく残る。
アベイ・デ・ロック
わずかに濁りのある赤みがかった濃い栗色の「アベイデ·ロック」は、2次発酵用の糖分も遠心分離機も用いない。
そのため、ビールには多くの酵母が沈殿している。
グラスからは甘いチョコレートのようなアロマが漂い、口に含むとまずモルトのこうばしさと甘味が広がる。そのあと入れ替わり表れるのは、バナナやバニラ、アメリカンチェリー、ラムレーズン、ニッキ、リコリス、黒糖などのフレーバー。
ミネラルの多い岩塩をかみつぶしたときの刺激、暖炉で弾ける薪のような香りもかすかに探し出せる。
修道院を感じさせるネーミングやラベルから、古い醸造所のように思われがちだが正式に創業したのは1979年。
もともと公務員だったジャン·ピエール·エロアール氏の自家製ビールが評判を呼び、醸造所に発展した。
当初は2週間で50L、年間に換算すると1.2klにすぎなかった醸造量が、現在は年間3000kl。
その急成長ぶりこそ、良質のビールとして「アベイ·デ·ロック」が支持されている何よりの証です。

サンフーヤン ブロンド
布教のためにアイルランドから大陸にやってきた修道士フーヤンは、655年にベルギーの地で斬首されてしまう
時は流れて1125年、フーヤンの名を冠したサン・フーヤン修道院が殉教の地に建てられ、ビール造りが始まった。
1950年以降、「サンフーヤン」は1894年に建てられた醸造所でフリアー家が造っている。
柑橘系の香りの「サンフーヤン トリプル」、ロースト感のある「サンフーヤンブリューン」、ホワイトエール「グリゼットプロンシュ」など上質のビールを造っている。
「サンフーヤン プロンド」は、輝きのあるゴールドのビールに純白の泡がリッチに盛り上がる。パッションフルーツやオレンジ、紅茶、雨上がりの森のような湿った木のアロマを感じる。口に含むとマンゴーや甘夏を思わせる酸味と、上白糖やカステラを連想させる甘味のキヤラクターが交差する。チキンや卵料理と素晴らしい相性を見せる一方、シフォンケーキや甘味のある江戸風の卵焼き伊達巻きと合わせるのも面白い。
フローレフ ダブル
「フローレフダブル」は、光にかざしてもほとんど向こうが見えないほどのダークブラウン。即りなく黒に近い、プラムやイチジクを思わせるフルーティーなアロマが心地よく、ひと口飲むと巨峰、熱したバナナ、ブラックベリーに似たフルーティーフレーバーと、ハチミツやカラメル、バナナブディング、ブラウレシュガーを連想させる甘味が広がる酸味が優る赤ワインのようなアルコール感とクロープ、黒初版を連想するスバイシーな刺激もある。牛肉の煮込みなど濃厚な料理はもちろん、竹の子の梅肉あえや桜餅など、和のテイストと非常に性がいい。
ラテン語で「花」を冠したフローレフ修道院は1121年にベルギーのナミュールに設立された。1250年にはビールの醸造を始め、1983年以降はライセンス契約を結んだルフェーブル醸造所で造られている。熱成感たっぷりの「フローレフプリマーメリオール」明かるいブロンドカラーの「フローレフトリプル」なども人気が高い。
レフ・ブラウン
レフ修道院は12世紀にベルギー中南部の町ディナンに建てられて、13世紀にはビールを醸造していたという。
1952年からはレシピを外部に提供し、現在はインベブ社が委託醸造をしている。
「レフブラウン」は非常に濃い栗色。
ドライプラムやナッツ、ブラウンシュガー、リンゴ、花束のアロマがある。ひと口飲むとカラメル、チョコレート、シナモン、レーズン、アメリカンチェリー、白檀などのフレーバーが広がっていく。
わずかな酸味もあり、後口には苦味と甘味が残る。
なお「レフ」シリーズには、ほかにゴールドカラーの「ブロンド」、チェリーとシナモンを思わす「ラデュース」、カラメルアロマの素晴らしい「ヴィエーユ·キュヴェ」などの人気銘柄もある。
ミューズ川沿いに開けたディナンの町は、断崖上の城塞でも有名。現在も中世の街並みが残る美しい地方都市だ。 町の一角にある「カフェ・レフ」で「レフ」を飲むと、中世にタイムスリップした気分になる。
トリペル・カルメリート
1679年、ベルギーのデンデルモンドでカルメル会大修道院は3つの穀物を原料にしたビールを造っていた。
この中世のレシピをヒントに、 大麦/小麦/オート麦という3つの麦を使った「トリベル・カルメリート」が離生したのは1997年大麦がベースとなり、小麦はスムーズな飲み心地、 オート麦はしっととした舌触りを演出する。
ラベルに描かれた収穫シーンからも、麦への愛情とこだわりがうかがえる。
輝のあるライトゴールドに、純白の泡が美しく盛り上がる。
豊かなカーボネーションーが、パチパチと泡の弾ける音とたち上がり続ける気泡を生み、心を奪われる、香りにはレモン、オレンジ、 ブーケガルニ、花束、 梨などが潜んでいる
口に合むとキャンディーシュガーやハチミツ、水あめを連想させる 甘い風味が広がったあと、一瞬ホップの苦味が顔を出し再び甘味が支配する。 グラスの周囲を飾るユリの紋章も優雅で繊細です、 それらすべてが、「トリプル、カルメリート」の品格を高めます。

ランビック
「ランビック」は、ブリュッセルとその近郊で造られる自然発酵ビール。
培養した酵母ではなく、 空気中を浮遊する野生酵母を取り込んでビールを醸造します。
酸味が強いのが大きな特徴で、木樽で3年間熟成した古酒と1年熟成の新酒をブレンドして味を調えた「グース」、サクランボを漬け込んだ「クリーク」やラズベリーを漬け込んだ「フランボワーズ」などの「フルーツランビック」、砂糖を溶かした「ファロ」などのバリエーションがあります。
ドゥリー・フォンテイネン・クリーク
ブリュッセルから約10km、ベールセルにあるドゥリー・フォンテイネン醸造所は、1953年にガストン·ドゥベルドゥル氏とレイモンド夫人が、当時ブレンダーとして有名だった村長の経営するカフェを買い取り、自らの手でランビックのブレンドを始めたことに端を
発する。「ドゥリー·フォンテイネン」とは「3つの泉」という意味で、3種類のランビックをブレンドしていたことに由来する。
1998年、2代目のアルマン氏がブレンドだけでなくビール造りを始め、醸造所になった。
次男のギド氏が経営する併設レストランでクリーク・ドレッシングのサラダ、ホロホロチョウの煮込み、バニラアイスと合わせて「ドゥリー・フォンテイネン・クリーク」を飲んだときの記憶は今でも忘れられない。
美しいチェリーピンクで甘味がナチュラル。酸味は強すぎず、バランスが絶妙。新鮮なチェリーそのものを口にしたかと錯覚するほど自然だ。「このビールがあれば、ほかは何もいらない」と感じた。
ブーン・フランボワーズ
ブリュッセル近郊のレンベークの町は、ランビックの語源と考えられている。
ここを流れるゼナ川周辺に野生する酵母がビールを醸し、ランビックが生まれた。レンベークにあるブーン醸造所は、1978年にフランク·ブーン氏が17世紀から続く醸造所を買い取ったものだ。 古典的な建築のブルワリーには、自然発酵のランビックを熟成させる木樽が並んでいる。
ランビックに新鮮なフランボワーズと少量のチェリーを潰け込み仕上げる「ブーン·フランボワーズ」は、茶の色相をわずかに持つ濃い紅色。
アロマからはフランボワーズ、チェリー、木くず、ヨーグルト、レアチーズケーキを感じひと口飲むと、アロマのキャラクターに加えて、ビネガーのような明確な酸味と、かすかに塩や海風、若草のキャラクターを探し出せる。
フルーツビネガーのドレッシングを使ったサラダやラズベリーソースでマリネしたシーフード、フルーツやジャムを使ったデザートと相性がいい。
カンティヨン・グース
ブリュッセル南駅から徒歩5分。 外壁の [BRASSERIE CANTILLON] 文字がなければ通り過ぎてしまうほど住宅地になじんだカンティヨン醸造所。
しかし、一歩踏み入れると酸味ある香りが訪問者を歓迎し、そこがランビックの故郷であることを教えてくれる。
ランビックは自然発酵のビール。
煮沸された麦汁は、深さ約20cmのプール状の冷却槽に満たされて、ひと晩放置される。部屋の一部には壁がなく、空気中の野生酵母を取り込んで発酵。そして、樽熟成を経てランビックに仕上がるのだ
「カンティヨン·グース」は、酸味の強い3年熟成樽と甘味の残った1年熟成の若い樽をプレンドして味を調えたもの。
パッションフルーツやレモン果汁のような強烈な酸味に驚かされる。木片やカッテージチーズ、皮表紙の古本、納戸のホコリ、湿った毛布のような香りがあり、その酸味とともに違和感を覚える人もいるようだが、好きになると離れられない。
ラベルのケシは、無農薬有機栽培の原料を使用している証だ。
レッドエール
「レッドエール」はフランダース地方に伝わる赤みを帯びたビールのことです。
乳酸菌の働きにより独特のさんみが生まれます。
ドゥシャス・デ・ブルゴーニュ
「ドゥシャス、デブルゴーニュ」とは「ブルゴーニュの公爵夫人」のこと
1457年にブルージュで生まれ、のちにハブスブルク家マクシミリアン1世の妻となるブルゴーニュ公国のマリー姫にちなんだ名前だ。領民からは、「美しき姫君」と慕われていた
「ドゥシャス·デ·ブルゴーニュ」を生産するヴェルハーゲ一族は、16世紀から醸造を続ける伝統ある家系だ。
現在の醸造所は1892年から営まれており、熟成用オーク樽のいくつかは当時のものが使われている。
かすかに赤みがあるダークブラウンの「ドゥシャスデ·ブルゴーニュ」からは、黒酢や紹興酒、赤ワインビネガーブラックチェリーのようなアロマを感じる。口に含めば熟成したバルサミコ酢、アセロラ、パッションフルーツ、木の蜜、チョコレートなど甘味と酸味が交
差し、後口にはイチゴや巨峰に似た風味が残る。めくるめく香りと風味は、貴婦人の宝石箱を思わせる。
セゾン
「セゾン」のルーツは、農民が夏の農作業の合間にのどの渇きを潤すために造った自家製ビールです。
各家庭ごとに秘伝の味がある。
冬に仕込んで夏まで保管するため、ホップやスパイスを効かせて防腐効果を高めました。
ボンヴー
農民が作業の合間に飲むための自家製ビールがセゾン·ビールのルーツ。
その代表的銘柄「セゾン·デュポン」を造るデュポン醸造所には、「モアネットブロンド」や「セルベシア」など多くの優れたセゾン·ビールが揃っている。
「ボンヴー」もセゾン・ビールのひとつで、もともとは新年を祝い得意先に配る特別なビールだった。
1970年の年明けから始めると瞬く間に評判となり、3年にはついに通年販売の商品になった。
ちなみに「ボンヴー」は「愛を込めて」という意味だ。
わずかにくすみがあるイエローゴールドの「ボンヴー」は、細かい泡がリッチに盛り上がる。レモンやオレンジなどフルーツの香り、スパイシーなホップ、かすかに漂うウッディーなアロマが魅力的だ。 ひと口飲むと砂糖菓子を思わせる甘味、ホップのフレーバー、軽い酸味が絡みあう。 豊かな味わいと優しい口当たりが堪能できるだろう。
ホップの苦味は後口に少し残り、シャープな印象をもたらしてくれる。
ビエール・ド・ギャルド
「ビエール・ド・ギャルド」は、ベルギーと国境を接する北フランスの農村で受け継がれてきたビールです。
「セゾン」と同じように家庭ごとの自家製ビールの味わいが基本となっています。
ほかにも、黄金色の「ブロンド」や茶色い「ブリュン」など色でベルギービールを分類したり、フルーティーでアルコール度数の高い「トリプル」、モルティーでアルコール度数が中程度の「ダブル」など、アルコール度数による分類方法もあります。
ベルギービールに関しては、それぞれのグループの定義がほかの国のスタイルガイドラインより広かったり、クロスオーバーしていたりすることを理解しておきたい。
ジャンラン ビエール・ド・ギャルド・アンブレ
これほど美しい色合いのビールがほかにあっただろうか?「ジャンランビエール·ド·ギャルド·アンプレ」は透明感あるクリアな眺迫色。宝石のような輝きに目を奪われ、いつまでも見とれてしまう。
しかし、見ているだけではつまらない。グラスに顔を近づけると華やかなハープ、エスニックなスパイス、完熟した柿やザクロといったフルーツ、暖炉で燃える薪の香りがする。口に含むとモルトの甘くこうばしい味わいが現れ、ゆっくりとホップの苦味が押し寄せる。
そして、残り香は耽美な甘味。ポトフなどの煮込み料理やレーズンなどドライフルーツと味わいたい
フランスはワインの国と思われがちだが、北部はビール大国ベルギーと接しており、古くからビール造りが盛んな土地柄だ。
古来、醸造には向かない夏の暑い時期まで保存するため、「ビエールド、ギャルド」(=保存のビール)と呼ばれる1ジャンルを築いた。なお、「ジャンラン」シリーズでは、黄金色をした「ブロンド」も人気がある。

ビーケン (ハニービール)
「ビーケン」のラベルは実にキュートだ。蜂の衣装を着た若い女性は、蜂の妖精にも見てとれる。
少ない色数でシンプルだが、ビビッドで人目を引き、ボトルとのコントラストも見事だ
フラマン語で「ミッパチ」を表す「ビーケン」の名と、ラベルに描かれた蜂娘。
それは、このビールの原料にハチミツが使われていることに由来する。ヨーロッパにはハチミッを使ったビールの伝統があり「バルバール」や「ビエール·デウルス」など、ほかにもいくつかのハチミツ入りビールがある。
くすみあるディープゴールドのビールからは酸味のあるフルーツ、百合の花、ハチミツの香りを感じる。ひと口飲むと穏やかなモルトの甘味、オレンジピールを思い出す苦味を帯びた酸味、ハチミツの重厚な甘味が複雑に絡み合い、何ともミステリアスな味わいだ。アルコール度数が8.5%もあるものの、バランスがいいのであまり強くは感じない。
マーマレードやハチミッをかけたワッフルと楽しみたい。
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